日露原子力協定の締結

2009年5月12日、プーチン首相の来日に伴い日露間で、刑事共助条約、税関協力相互支援協定等の成果文書に署名がなされた。その中でも日露双方が最重視しているのが原子力協定である。これが発効すれば、ウラン鉱山の開発、軽水炉の建設、使用済み核燃料再処理という上流から下流までの原発関連事業を協力して行うことが可能となる。

d0007923_123099.jpg平和利用目的で、原子力関連品目や技術情報の大量かつ長期的な移転を行う場合には、相手国との間で二国間原子力協定を締結することとなっており、日本は、09年1月現在、英国、カナダ、米国、オーストラリア、フランス、中国、欧州原子力共同体(EURATOM)との間で締結している。ロシアとの原子力協定締結交渉は、07年2月の安倍・フラトコフ両首相会談における合意に基づき、技術の軍事転用禁止と核物質管理場所の国際原子力機関(IAEA)による保障措置(査察)受け入れを条件に行われてきた。

世界最大の濃縮ウラン供給国であるロシア(シェア4割)は、2030年までに世界で300基の原発建設の需要を見込んでいる。同年までにロシア国内で原発26基を建設し、発電比率を16%から25~30%に拡大する方針である。
プーチン氏が大統領在任中の2007年、大統領直轄の唯一の国営公社として軍民複合原子力企業「ロスアトム」が設立された。東シベリアには、ウクライナ、カザフスタン等も参画するウラン濃縮・核燃料サイクルの国際センターが建設され、08年、同センターをIAEA適格施設としてリストに追加するようIAEAへの申請がなされた。日本は、ロシアを通じて、世界第2位の埋蔵量を持つカザフスタンのウランも獲得できることとなる(日本はカザフスタンとも原子力協定を結ぶ予定)。

このように原発事業を推進するロシアは、かねてより日本に先進的な原発技術の協力拡大を要望していた。07年のフラトコフ首相来日時、随行団員にいたアルミ王デリパスカ氏が日本製鋼所(大型原子炉圧力容器などで世界シェアの8割を占める)室蘭製作所を見学し、600トンの鋼塊を作る世界唯一の技術に驚嘆して同社の買収を試みたというエピソードがある。

この度の日露原子力協定締結を見越して、既に08年3月、東芝とロスアトム傘下のアトムエネルゴプロムの間で原発建設、機器製造・保守等事業協力が基本合意されている。地球温暖化の時代、「グローバルな原子力ルネッサンスを加速」(東芝)することは、日露双方に利益をもたらすが、アトムエネルゴプロムの親会社ロスアトムには核兵器の製造部門があり、日本の原子力技術が転用される危険性は拭えないと指摘する声もある。

【2009年5月12日日本経済新聞、8日毎日・産経新聞、4月21日日経産業新聞、平成20年版原子力白書、08年3月20日・09年5月12日東芝プレスリリース、07年3月10日読売新聞他より】
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by itsumohappy | 2009-05-13 01:25 | ロシア
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