ロシアが気になる

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2008年 08月 26日

常岡浩介 『ロシア 語られない戦争 チェチェンゲリラ従軍記』、廣瀬陽子 『コーカサス 国際関係の十字路』

コーカサス、チェチェン問題を扱った両書について。ともに2008年7月の出版です。

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『ロシア 語られない戦争 チェチェンゲリラ従軍記』 (アスキー新書71)

d0007923_22385454.jpg常岡氏はフリージャーナリストで、1999年からチェチェン及び周辺地域を取材している。イスラム教に改宗し、2001年、「聖戦士」(チェチェン独立派が自らを指すときの呼称)たちの、パンキシ渓谷からアブハジアへの侵入作戦に参加した。コドリ渓谷(アブハジアとグルジアの間で衝突が頻発している地域)でロシア軍の追撃を受けた経験などチェチェン戦争の一端を記している。
取材の中で、「チェチェン戦争に対し中立を宣言しているグルジアが、秘密裏にチェチェン独立派を軍事支援しつつ、その軍事力を自国の国益に利用しようとしている事実」を確認し、グルジア当局に抹殺されかけた。 

400年前からほぼ半世紀ごとに戦争が繰り返されてきたチェチェンでは、この14年間に人口の4分の1に相当する約25万人が死亡し、20万人が難民となった。ロシア言うところの「対テロ戦争」における「想像を絶する残虐さ」についてあまり知られていないのは、ロシア当局の徹底した情報統制のため。現地では今でも山岳部でゲリラの抵抗、戦闘が続いているらしい。

ひとくちに「チェチェン独立派」と言っても実態は多種多様、との解説があるが、ロシア政府にとっては一律「テロリスト」。著者によれば、チェチェンの指導者に直接取材をした者は、ロシアから法的に犯罪者として扱われるらしい(実際著者はFSB<連邦保安庁;もとのKGB>に拘束されている)。そのため、チェチェン側を中心に取材せざるをえず、中立の目線ではないとの断りがある。

1人倒れれば次の10人が立ち上がるという不屈の精神を持つカフカス(コーカサス)の聖戦士らは、今や抵抗自体に意味を見出しつつあるそうだ。おそらく著者が本書で最も訴えたかったのは、「カフカスという地域でこういう人が生き、死んでいった」という「現代の見捨てられた悲劇」に、日常、民族紛争とは無縁に暮らす日本人は多少なりとも思いを馳せて欲しいということであろう。

06年11月にポロニウム中毒死した元FSB中佐リトビネンコ氏へのインタビューつき。FSBの違法な工作活動などが語られている。


『コーカサス 国際関係の十字路』 (集英社新書452A)

d0007923_22421839.jpg廣瀬氏は静岡県立大学准教授(国際政治)。
本書は、コーカサス地域における紛争と民族問題に関する概説本である。大国の様々な利害・思惑が交錯するこの地域に関する全てをコンパクトに解説するのは困難、とある。確かにそうだろうが、南オセチアをめぐるグルジアとロシアの紛争の報道が続く今日、コーカサスにおける問題点、着目すべき点をおおまかに知るには適切な本だと思う。

常岡氏も言及している、「コーカサス地域の国境線は実際の民族分布と異なる」「9.11テロ以降、ロシアはチェチェン紛争を「テロとの戦い」と位置づけた」という点などがまず押えるべき基本認識だろうか。

本書によれば、コーカサスにおける分離独立紛争の始まりは、ソ連の崩壊に伴う民族主義の台頭による。現在、ロシアは、民族自決の原則を南コーカサス(アゼルバイジャン、グルジア、アルメニア)の未承認国家に適用し、分離派を支援することで紛争に間接関与している。一方、北コーカサス(チェチェン、ダゲスタン、イングーシ、北オセチア。これらはロシア連邦を構成する共和国である)では、ロシアは紛争の当事者である。

コーカサスの歴史、民族、宗教、言語等、地域の概観から天然ガス・石油等の資源や地域の安全保障をめぐるコーカサス周辺国・米・露・西欧諸国それぞれの利害まで、幅広く触れられている。
06年5月に開通した、アゼルバイジャンからグルジアを経てトルコに至る「BTCパイプライン」の説明も比較的丁寧だと思う。

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グルジア一国にしても「長寿村」「スターリン」位しかイメージがわかない私にとって、コーカサス問題はよくわからない。報道のほか、上記のような現地を見た人たちによる著作や体験談等を通じて、あれこれ考えるしかなさそうです。
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by itsumohappy | 2008-08-26 23:12 | 文学・本


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