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2006年 12月 17日

岩下明裕 『北方領土問題 4でも0でも、2でもなく』

北方領土問題の解決案として、先日、麻生外務大臣は「択捉島の25%と残り3島(国後、色丹、歯舞)をくっつけると、ちょうど50・50(%)ぐらいの比率になる」として、面積を考慮した交渉を視野に入れるべきという認識を示したという。(12月14日北海道新聞)
麻生外相は9月にもこの問題に関し、3島返還という選択肢があることに触れている(9月28日毎日新聞)。北方領土問題は、政治的な決断以外に解決策はなく、領土解決の意欲をみせているプーチン大統領の任期中に何とかしたいという考えがあるらしい。

もはやこの問題で政治決着というのは、何らかの妥協が要求されるということであろうが、08年までの大統領の任期中までに大きく動くとは考えにくい。それとも麻生大臣は相当の覚悟を持って何か具体的な交渉を始めるのだろうか。
日本政府の方針は、「四島の帰属を解決して平和条約を締結する」である。四島の帰属とは当然日本への帰属という前提のもと、粘り強く訴えていくというもの。しかし、もう十分粘り強く訴えてきたのではないか?先も見えないままいつまで粘れるものか?と考える人たちが出てきても不思議ではない。実際、根室市長は、地元経済の疲弊を考えると、歯舞、色丹の2島先行返還を糸口とする交渉を望むという意見を述べている。(6月29日朝日新聞)

d0007923_238384.jpgそういう声もあれば、何十年、何百年かけても4島を取り戻せ、絶対妥協するな式の強硬な論もあるようだ。領土問題はナショナリズムを刺激しやすく、当事者は時には冷静さをなくす。ということで、できるだけ中立的な視点に立って、この北方領土問題の解決への提言を試みたのが本書である。

著者はスラ研(北海道大学スラブ研究センター)の教授で、専門は、ロシア外交、東北アジア地域研究。政治色の濃い(著者曰くまともな学者を目指すならそういう問題は扱わないそうだ)北方領土問題は、これまで意識的に避けてきたそうだ。
この本では、04年10月、沿海州の中ロ国境が、「フィフティ・フィフティ」で係争地を分ける形で解決された画期的事件のあらましと手法を解説し、北方領土問題解決に応用できる可能性を探っている。

四島返還を掲げ続けるなら、その覚悟を一度国民に問うべき時期が来ており、もしその覚悟がなければアプローチを変えてもいいのではないか、ロシアは今まで4島返還を一度でも本気で考えたことがあるか、相手にその気がない交渉を続けても可能性のない闘いとなるだけではないかという教授の意見には説得力がある。さらに、北方領土解決のために、何らかの妥協した際の利益と妥協を一切しない場合の利益とどちらが大きいか検討してもよいのでは、とも提言している。

中ロ国境は、過去、軍事衝突も起きた緊張感の強い地帯であり、中ロに国境問題を解決する意欲と必要性があった(解決する利益のほうが大きかった)。では北方領土の場合はどうなのか、政府が今までどんな実際的な研究をしてきたのかよくわからない。
現実的な交渉とは何かを考えさせる本。新書なので読みやすいと思う。今月、朝日新聞社の大仏賞を受賞した。

麻生大臣には歴史に残る交渉の大きな一歩を踏み出してほしいですね。

(参考:北海道大学スラブ研究センター『国境・誰がこの線を引いたのか-日本とユーラシア』)
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by itsumohappy | 2006-12-17 23:19 | 歴史・領土問題


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