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収入の話

10月末、ロシア政府閣僚19人の資産が政府機関紙「ロシア新聞」で公開された。項目には、年収、土地、アパート、ダーチャ、ガレージなどがあるが、人によっては年収しか出ていない。何故かプーチン大統領の分は非公開。 (以下、参考までに現在1ルーブル=約4円)
閣僚の中で年収のトップはトルトネフ天然資源相で、2億1140万ルーブル(約9億円)。そのほとんどが、自身が設立した食品貿易会社の株の配当だと語ったそうだ。
この大臣の収入は極端で、2位(運輸相)と3位(IT相)は、それぞれ1200万ルーブル、1100万ルーブル。その他の閣僚の収入は120万~220万ルーブルの範囲。もちろん各人全ての資産が公開されているわけではないのは日本の閣僚の場合と同じ。

原油高による好景気で、ロシアで富裕層が増えているという報道は最近目立つ。市場の特性は「新し物・高級品好き」とのこと。2002年からモスクワで販売されているレクサスの場合、今年上半期販売数は、昨年同期比の2.1倍(4281台)となった。オーナーには、2,30代の実業家が目立ち、LS430(ロシアで約1000万円)とかRX350(7~800万円)なども即金払いが大半を占めるらしい。自分はレクサスのセダンタイプに乗り、妻や恋人にSUVを贈るケースも多いというが、ロシアでもごく一部の層だろう。

2005年にモスクワに行ったとき、現地ロシア人ガイドが、ロシア国民の平均月収は3~4万円、モスクワの場合は7~8万円と言っていた。共働き世帯でようやくカローラ(約160万円~)に手が出るという感じらしい。
ロシアのような広大な地でしかも多民族国家だと3,4万という平均月収の生活レベルが地域ごとにどの程度のものなのかさっぱりわからない。日本のような小さな国でも平均県民所得で最高の東京都で約400万円、最低の沖縄はその半分。だからと言って沖縄の人が不幸な暮らしをしているかというと必ずしもそうでもないだろうし。
ロシアの専門家によるとロシアで最も貧しい層は人口の約7%、1日25ルーブルで生活しているレベル。西欧社会にはここまで貧しい人々はいないが、東欧、中国にはいるという。低いほうも極端だ。

もう少し普通に近いレベルの話として、最近報道にとりあげられた首都での出来事を2つ紹介。
市中をパトロールするモスクワの警官は月収5000ルーブル。モスクワでまともな暮らしをするにはこの2倍が必要。警官を辞めたい人は多いが、他に適当な仕事が見つからない。
警官には、1日10件の摘発ノルマが課せられている。生活が苦しいので、身分証やパスポートチェックの際、不携行なら罰金を多めにとってその場で解決ということが起こる。

エルミタージュ美術館職員の平均月収は、1.5万ルーブル。(うち国が負担しているのはたった2000ルーブルで、残りは入場料や館の活動による上乗せ分。)地方の美術館だと公的最低生活費(2653ルーブル)以下となる。国内の美術館、博物館では毎年高価な文化財の盗難事件が50~100件起き、最近は職員が犯行に関わっているケースが多い。つましい給料が、職員のモラル低下を招いている。エルミタージュでも今年9月、約5億円分の宝飾品が横流しされる事件が起きた。収蔵品管理システムが不十分で、事件は犯人の一人である保管係の急死で発覚した。
07年度のロシア連邦予算は6.6兆円の歳入超過見込みだが、文化面には予算はあまり行ってないようだ。
(2005年6月14日朝日新聞、2006年7月22日週間ダイヤモンド、9月7日朝日新聞、10月30日Moscow Timesより)
by itsumohappy | 2006-11-05 21:27 | ロシア
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