ロシアが気になる

amihappy.exblog.jp
ブログトップ
2006年 03月 12日

プリスターフキン『コーカサスの金色の雲』

1980年に書かれたロシア人作家による物語である。1944年、独ソ戦中に起きたスターリンによるチェチェン人等の強制移住問題(反ソ的という理由でチェチェン・イングーシ人をほぼ一夜にしてカザフスタンに追放し、またその他のコーカサス地域の少数民族もキルギスやシベリアに移住させた)が背景となっている。
あとがきによれば、回し読みされていた草稿が当局に漏れ、作者に圧力がかかったそうだ。ゴルバチョフの時代になって雑誌に不完全ながら掲載され、その後映画化もされたらしい。

内容は、第二次世界大戦中モスクワの孤児院からコーカサス(カフカス)に移住させられた作者の経験に基づく。
食べ物がたくさんあると聞かされてやってきた土地には、誰かのものであった家々と畑があり、そこによそからやってきた人々が代わりに生活していた。追い出されて山々に逃げ込んだ元の住民は、かつて自分たちのものであった村を襲い、掃討にやってきたソ連軍とも闘いを繰り広げ、新住民は逃げ惑う― といったストーリー。双子(らしい)の兄弟のサバイバルを中心に展開される。

前半、小ギャングみたいな孤児たちの活躍?ぶりを描く軽妙な語り口から、わりと気楽に読んでいたのだが、あるところから思わず居住まいを正してしまい、先を読むのが恐ろしくなった。
追い出されたチェチェン人の、侵略者に対する憎しみと、子供も大人もそれぞれに戦争の深い傷跡を抱えた新住民の哀れさに、ロシアの過酷な歴史と民族問題が垣間見える。

         コーカサス地方
d0007923_0272028.jpg

***********
小説の題名はレールモントフの詩から。
コーカサスは、プーシキン、トルストイも作品や詩に描いたところ。カスピ海と黒海の間に5000メートル級の山々が連なりヨーロッパとアジアを分ける。アルプスのような美しい自然と温泉が有名。コーカサス山脈は、大コーカサス、南の小コーカサスとあり、山脈の南側がグルジア、アゼルバイジャン、アルメニア、北側がロシア連邦。
 
         コーカサスの最高峰エルブルス山(5642m、カバルダ・バルカル共和国)
d0007923_029229.jpg

この地域は、16世紀のイワン雷帝による侵略から19世紀はじめのコーカサス戦争等の歴史の中でロシアに制圧され続けてきたが、チェチェン人は独立をあきらめずに今に至っている。モスクワの劇場や北オセチアの学校での占拠事件は抵抗のひとつのあらわれであったが、チェチェンの問題は深すぎて正直よくわからない。
[PR]

by itsumohappy | 2006-03-12 22:58 | 文学・本


<< 2月革命と臨時政府の成立      マースレニッツァとブリヌイ >>