ロシア文学と言えばまずひたすら長大で気軽に読もうという気が起きないイメージがある。トルストイやドストエフスキーの著名な作品を読んでもなんだか疲れたなぁという思い出があるだけで、あまり感銘を受けたって記憶がない。大人になってから読むと全然違うんだろうか。しかしもう『戦争と平和』とか『カラマーゾフの兄弟』を読む気力はないなぁ。
ロシア文学の神、プーシキンの作品では、中高生の頃に『スペードの女王』『大尉の娘』などは読んだ。内容は覚えていないのだが、面白かったように記憶している。でも特にその他の作品を読んでみることはなく、しばらく忘れていた。 プーシキンの肖像 右は自画像 ロシア人はプーシキンの作品を読みながら成長していく、と言われるくらいお国ではプーシキンの存在は大きいらしい。日本で存在がもうひとつなのは、時代が古いせいもあるが詩句のすばらしさというのはもとの言語でないと理解しにくいこともあると思う。 『ベールキンの物語』と『エヴゲーニー・オネーギン』を読んだ。 ベールキンは『A.Pによって刊行されたる故イヴァン・ペトローヴィチ・ベールキンの物語』という小難しい題名であるが、5つの独立した短編から成るもので、どれも簡潔で読みやすい。広大な大地を背景に農奴制と貴族社会というロシアならではの前近代性を頭に入れながら読むと面白い。昔は田舎にこんな貴族がいたんだろうなぁ。名前でも田舎の子の名前とかあるようで、そういう当時の社会風俗の解説がついていると楽しめる。ベールキンに限らないが。 『エヴゲーニー・オネーギン』は、プーシキンの代表作。今まで本を開いてみてその見慣れぬ構成におののいて、ストーリーは知っていたが読まないままでいた。これは小説ではなく物語詩で、一見とっつきにくいが読んでいくうち慣れてちゃんと物語の世界に入っていける。プーシキンが腐心したであろう韻とか字句の構成美は翻訳では失われるが。当時数部に分かれて出版され、読者は次編の出版を心待ちにしていたそうだ。 やさぐれ貴族オネーギンの描写が読みどころのひとつだろう。プライドだけは高く才気は上すべり気味の様子や決闘の原因となる友人への態度など、他人の純粋さをからかうねじけぶりが淡々と描写されていく。タチアーナはまさにロシアの大地の強さを持つ理想の女性として描かれる。最後のオネーギンとのやりとりのシーンはぐっとくるものがある。 この作品はオペラやバレエにもなっている。映画ではレーフ・ファインズがオネーギン、リブ・タイラーがタチアーナをやった。なかなかよい映画だったと記憶している。まあ原作がよいからまじめに作ればよいものになると思う。 プーシキンは『オネーギン』のシーンにあるような決闘を実際にやり、その傷がもとで37歳で死んだ。伝記を見ると20歳くらいの時から決闘騒ぎをしている。自ら誇っていたエチオピアの熱い血のせいか。ドラマチックな人生だ。
by itsumohappy
| 2005-11-04 21:23
| 文学・本
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