<   2012年 08月 ( 1 )   > この月の画像一覧


2012年 08月 27日

パンクバンドへの実刑判決

2012年8月17日、モスクワの地方裁判所は、今年2月21日に救世主キリスト聖堂内でプーチン政権批判のゲリラ演奏を行ったパンクバンド「プッシー・ライオット」メンバー3人に、教会を冒涜するなどフーリガン(暴徒)行為の罪により禁錮2年(求刑は3年)の実刑判決を下した。27日、弁護人は判決を不服として控訴した。3人は、3月から拘束中であり、2013年1月までの収監が決定している。
8月20日現在、ロシア内務省は、現場で逃走したバンドの他のメンバー2名を逮捕すべく手配中である。

メンバーは、覆面姿で聖堂の祭壇に乱入し、「マリア様、プーチン氏を追い払えたまえ」と「パンク祈祷」を行い、その模様を招待されていたジャーナリストがネット配信した。

d0007923_015796.jpgプッシー・ライオットは、ロシア全土から集まった2、30人の若い女性グループで、バンドというよりもパフォーミング集団に近いもののようだ。以前から、赤の広場他公共の場で怪しげなパフォーマンスを行い、お行儀のわるい「ばかもの」的存在で知られていたらしい。
2月に聖堂でゲリラ演奏を行った動機として、メンバーの一人は、ロシア正教会のキリル総主教が、大統領選(3月4日)でプーチン氏への投票を呼びかけ、反プーチン集会に行かないよう語ったためで、演奏は「市民の政治活動」と主張した。
総主教は、プーチン氏のこれまでの統治を「神の奇跡」と称え、同氏への支持を明確にしている。

総主教は、ゲリラ演奏事件を「神への許されざる冒涜」と激しく非難し、正教会関係者は、宗教への侮辱に関する法律の厳格化を求めた。一方、公判中より、国内外から、「容疑に対して拘束期間が長すぎる」との批判があった。人権擁護団体モスクワ・ヘルシンキグループは、「罰則ではなく良心に訴えるべき」と懸念を表明。また、作家のアクーニン氏ら100名の著名文化人らが、メンバーの釈放を求める請願を行った。
欧米からも「政治弾圧」の声が上がった。マドンナ、ポール・マッカートニー、スティングら有名人がロシア公演などでメンバーの解放を求めたり、支援活動を始めたりしている。

ロシアでは、5月7日のプーチン大統領就任後も政権への抗議運動がおさまらないため、6月9日、集会での違法行為への罰金の最高額を引き上げる「デモ規制強化法案」が施行された。これにより、個人への罰金の最高額が5000ルーブル(1ルーブル≒2.4円)から30万ルーブル、組織への最高額が100万ルーブルとなった。それでも6月12日、プーチン氏再選以来最大の5万人規模の反政府集会が行われ、参加者は、大統領の退陣や集会の自由を求めてデモ行進した。
また、7月13日、下院は、外国から資金援助を受けるNGOを「外国のエージェント」(スパイを指す表現)として登録を義務付け、活動を監視する内容の法案を可決した。違反団体の代表には300万ルーブルの罰金が科せられる。

d0007923_0153659.jpg民主化要求、表現の自由に対する締め付けが強化されているなか、プッシー・ライオットのメンバーへの実刑判決は、教会との密接な関係という痛いところを突かれて「逆上」したプーチン政権の、反政府勢力に対する見せしめとみられているが、最高刑である7年ではなかったことを喜ぶべきと皮肉る声もある。8月2日、プーチン大統領が、オリンピック観戦のため訪問中のロンドンで、メンバーについて「厳しく罰せられるべきとは思わない」と発言したため、「厳しすぎない判決」になったとのことである。

判決について8月17日、米国務省のヌーランド報道官は、「判決は不釣合いであり、ロシアにおける表現の自由にマイナスの影響を与えることを懸念する」との声明を発表した。また、EUのアシュトン外交安全保障上級代表も「裁判の公正さに疑問を呼ぶ判決で、深く失望している」とコメントした。


【2012年6月7日日本経済新聞、10日朝日新聞、7月12日産経新聞、14日毎日新聞、22日東京新聞、8月5日産経新聞、18日RIAノーボスチ、ロシアの声、日本経済新聞、22日・29日東京新聞他より】
[PR]

by itsumohappy | 2012-08-27 00:18 | ロシア | Trackback | Comments(2)