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2009年 11月 30日

ドストエフスキー 『賭博者』

―自分が滅びた人間だということを、いったい私は理解しないのだろうか。
・・・たった一度だけでも性根を押し通しさえすれば、1時間のうちに運命を根本から引っくりかえすことが出来るのだ!


『賭博者』(1866年)は、シベリアでの刑期を満了後、作家活動を再開したドストエフスキーの、愛人とのヨーロッパ旅行中滞在先のドイツでルーレット賭博にはまった体験に基づく著作である。『罪と罰』の執筆の傍ら構想されたため、時間の節約上口述筆記で完成された。先払いの原稿料も使い果たした作家は、ホテルの宿泊料も踏み倒した。取立てから逃れるために外遊を繰り返し、賭博に熱中するという状態が1863年から1870年ごろまで続いた。

『賭博者』の舞台はドイツの架空の町、ルレッテンブルク(ルーレットの町)。25歳の家庭教師アレクセイと老伯爵婦人が熱に浮かされたように賭博にのめりこむ姿がリアルに描かれている。いかれた人々のお金をめぐる狂態は、ドストエフスキー作品お約束のモチーフである。自分で自分を滅ぼしていることを半ば自覚しながらそれでも賭博を止めることのできないギャンブラーの心理状態を知るのに格好の小説だと思う。

前半が多少もたつくが、老婦人が登場するあたりから一気に読ませる。主人公をめぐる怪しげなフランス人やイギリス人のような、隙あらばギャンブラーの懐を狙うような人々が当時の国際的なカジノにはうごめいていたのだろうか。賭博場での全然役に立たないにわか指南役たちや見物人らの描写も面白い。金額の表記がたくさん出てくるが、20万フラン勝ったとあっても、当時の貨幣価値が不明なのでぴんとこないところがもどかしい。

ドストエフスキーが滞在したドイツ・ヴィースバーデンのホテル、ナッサウアー・ホーフ
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ホテルに隣接するクアハウスと中にあるカジノ。『賭博者』の舞台のモデルとなったところ。
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d0007923_0273268.jpgプロコフィエフが『賭博者』をオペラ化している(1916年)。ソ連で初演されたのは1990年になってからであった。
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by itsumohappy | 2009-11-30 23:23 | 文学・本 | Trackback | Comments(8)