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2009年 05月 13日

日露原子力協定の締結

2009年5月12日、プーチン首相の来日に伴い日露間で、刑事共助条約、税関協力相互支援協定等の成果文書に署名がなされた。その中でも日露双方が最重視しているのが原子力協定である。これが発効すれば、ウラン鉱山の開発、軽水炉の建設、使用済み核燃料再処理という上流から下流までの原発関連事業を協力して行うことが可能となる。

d0007923_123099.jpg平和利用目的で、原子力関連品目や技術情報の大量かつ長期的な移転を行う場合には、相手国との間で二国間原子力協定を締結することとなっており、日本は、09年1月現在、英国、カナダ、米国、オーストラリア、フランス、中国、欧州原子力共同体(EURATOM)との間で締結している。ロシアとの原子力協定締結交渉は、07年2月の安倍・フラトコフ両首相会談における合意に基づき、技術の軍事転用禁止と核物質管理場所の国際原子力機関(IAEA)による保障措置(査察)受け入れを条件に行われてきた。

世界最大の濃縮ウラン供給国であるロシア(シェア4割)は、2030年までに世界で300基の原発建設の需要を見込んでいる。同年までにロシア国内で原発26基を建設し、発電比率を16%から25~30%に拡大する方針である。
プーチン氏が大統領在任中の2007年、大統領直轄の唯一の国営公社として軍民複合原子力企業「ロスアトム」が設立された。東シベリアには、ウクライナ、カザフスタン等も参画するウラン濃縮・核燃料サイクルの国際センターが建設され、08年、同センターをIAEA適格施設としてリストに追加するようIAEAへの申請がなされた。日本は、ロシアを通じて、世界第2位の埋蔵量を持つカザフスタンのウランも獲得できることとなる(日本はカザフスタンとも原子力協定を結ぶ予定)。

このように原発事業を推進するロシアは、かねてより日本に先進的な原発技術の協力拡大を要望していた。07年のフラトコフ首相来日時、随行団員にいたアルミ王デリパスカ氏が日本製鋼所(大型原子炉圧力容器などで世界シェアの8割を占める)室蘭製作所を見学し、600トンの鋼塊を作る世界唯一の技術に驚嘆して同社の買収を試みたというエピソードがある。

この度の日露原子力協定締結を見越して、既に08年3月、東芝とロスアトム傘下のアトムエネルゴプロムの間で原発建設、機器製造・保守等事業協力が基本合意されている。地球温暖化の時代、「グローバルな原子力ルネッサンスを加速」(東芝)することは、日露双方に利益をもたらすが、アトムエネルゴプロムの親会社ロスアトムには核兵器の製造部門があり、日本の原子力技術が転用される危険性は拭えないと指摘する声もある。

【2009年5月12日日本経済新聞、8日毎日・産経新聞、4月21日日経産業新聞、平成20年版原子力白書、08年3月20日・09年5月12日東芝プレスリリース、07年3月10日読売新聞他より】
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by itsumohappy | 2009-05-13 01:25 | ロシア | Trackback | Comments(6)
2009年 05月 13日

前外務次官の「3.5島返還」発言

d0007923_0491993.jpg2009年4月17日付の毎日新聞で、谷内正太郎政府代表(前外務事務次官)が北方領土問題の打開に関して「私は3.5島でもいいのではないかと考えている。・・・択捉島の面積がすごく大きく、面積を折半すると3島プラス択捉の20~25%くらいになる。折半すると実質は4島返還になるんですよ。」と発言したことが報道された。この報道が波紋を広げると谷内代表は、当初発言を否定したが、その後「誤解を与えたかもしれない」と弁明し、中曽根外務大臣から厳重注意を受けた。

毎日新聞によれば、谷内氏へのインタビューには記者3名、カメラマン1名が同席し、内容は氏の同意を得て録音されていた。そのため、「記事が全て」とコメントした同社に対し、政府は抗議しなかったのだろう。

北方領土の面積
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3.5島返還発言を聞いて怒った国民がどれ位いるかはわからないが、プーチン首相が来日した09年5月11日付の主要紙朝刊(見た限り毎日、日経、読売、産経)に載った日本国際フォーラムによる意見表明「対露領土交渉の基本的立場を崩してはならない」において、学者、返還運動関係者、政治家等が、「関係者が長年血の滲む努力で築いてきた平和条約交渉の土台」が崩れると緊急アピールしている(「妥協を示唆するやり方は、交渉の進め方としてあまりにも軽率」とも言っている)。政府は、このアピールに対し、国益上問題があるとして撤回するよう何度も要求したそうだ。

一方、3.5島論にさほど違和感を感じない国民もいるのではと思う。サハリンでの日露首脳会談(本年2月18日)で、両首脳は、領土問題を今の世代で解決すること、メドヴェージェフ大統領の言う「新たな、独創的で、型にはまらないアプローチ」の下、最終的な解決につながるよう作業を加速させることで一致したのだから。

4島返還が達成されるまで粘り強く百年単位でがんばるか、「向こうが2島、こちらが4島では進展しない」(麻生首相)から妥協点を探るかは、最高権力者の政治判断次第である。近年の日露の首脳会談では、5月12日の麻生・プーチン両首相の会談も含め、「これまでの諸合意・諸文書に基づいて領土交渉を継続/加速することで一致」といった内容の表明がひたすら繰り返されている。その一方、「貿易、経済分野の関係強化は領土問題解決への環境づくり」というフレーズのもと日露の経済関係は着実に進展している。
特に日本側にとって、戦後63年過ぎた今となっては、領土問題は先送りするしかないのだろう。今更妥協策ではこれまでかけた時間が無意味になる。世の中には北方領土よりも優先して政治生命を賭けなければならない問題が山積している。北方領土を巡って戦争が起きるわけでもない(たぶん)。

谷内代表の3.5島返還発言は国内外への「観測気球」という見方もあるが、この発言で一番空しい思いを強めているのは、出口の見えてこない返還運動を懸命に行っている元島民をはじめとする人々及び根室等北方領土隣接地域の住民だろう。
 
【2009年4月21日毎日新聞、5月1日・8日北海道新聞、5月12日共同通信より】
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by itsumohappy | 2009-05-13 01:03 | 歴史・領土問題 | Trackback | Comments(2)
2009年 05月 13日

ビザなし交流再開へ

2009年1月、ロシアが国内法に基づき、北方四島渡航時における出入国カードの提出を日本に要求した問題は、5月1日、ロシア側が求めたカードへの署名は避けた形で両国が合意に至り、プーチン首相来日前にとりあえずの解決をみた。

これまでの北方領土への渡航方式は、
●日本側が作成した訪問団員リストをロシア側に提出。
●訪問団は日本外務省発行の身分証明書及び挿入紙を携行。(同行の外務省係官等が団員分をまとめて所持。ロシア側には提出しない)

という形であったが、今月からは、訪問団員リストに関して、
●訪問団員リストに訪問者全員が署名し、ロシア側に提出。
●その団員リストに基づきロシア側が出入国カードを作成。団員の出入域時におけるカードの半券受け渡しによりロシアは出入りを管理する。

こととなった。ロシアは団員が個々にカードの半券を所持するよう求めていると伝えられている。

ロシア側が作成した書類に日本側が記入・署名をしないので入国手続きには当たらない、というのが日本政府の見解である。「苦肉の策」「玉虫色の決着」と新聞は報道したが、外務省は「双方の法的立場を害さないことを双方が確認」した上での技術的な解決、と表明した。

ビザなし交流第一陣の出発は5月15日。高橋はるみ北海道知事も参加する予定である。以降9月まで6回の渡航が計画されている。

(追記:第一陣の訪問は、ロシア内部の調整が間に合わず5月13日、中止となった。次回は、同月22日択捉への出発が予定されている)

【2009年5月2日北海道新聞・毎日新聞、5月1日外務省プレスリリースより】
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by itsumohappy | 2009-05-13 00:47 | 歴史・領土問題 | Trackback | Comments(0)