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2009年 04月 17日

国立トレチャコフ美術館展 「忘れえぬロシア」

国立トレチャコフ美術館展(09年4月4日-6月7日 於東京:Bunkamura)の感想です。来日した75作品のうち半数以上が現地で常設展示しているもので、展示会の準備に5年かかったそうです。

d0007923_2239261.jpgこの展示会は、トレチャコフ美術館(左)所蔵絵画から、19世紀後半の移動展派の作品を主体に紹介するものである。移動展派は、1863年、ペテルブルクの美術アカデミーの形式主義を批判し退学した14名が設立した「移動展覧会協会」の画家たちを指す。クラムスコイ、ペローフらが同派を主導。移動展派は、モスクワ、ペテルブルク以外にキエフ、カザンなど地方都市を巡って一般向けの展覧会を行った(1923年まで48回)。

19世紀後半のロシアは、農奴解放令(1861)、「人民の中へ」運動(ナロードニキ運動;1873)、「人民の意志派」による皇帝アレクサンドル2世暗殺(1881)等にみるように、社会の変動期であった。移動展派の活動は、「人民の中へ」運動と呼応するもので、絵画を通じて民衆の啓蒙を目指したとされる。

この度の展示会は、庶民の日常風景画、フランス印象派の影響を受けた外光派絵画、雪原等ロシアらしい風景画、肖像画と様々な分野の絵画で構成されていてあきない。特に肖像画は、チェーホフ、トルストイらの文豪、皇族、芸術家、一般人(左翼学生もあった)ら様々な社会的立場の人々のものが並んでおり興味深かった。人間の内面を映し出した肖像画に限らず、生き生きとした自然の風景画などにもみえる抒情的なリアリズムは日本人に親しみやすいと思う。
ロシアの美術展の常?として初日でもそれほど混んでいなかったので、じっくり鑑賞できた。
(2009年4月7日毎日新聞、平凡社『ロシアを知る事典』2004年 参照)

【今後の巡回予定】
岩手県立美術館 2009年6月13日~7月21日
広島県立美術館 2009年7月28日~10月18日
郡山市立美術館 2009年10月24日~12月13日

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右:「忘れえぬ女」
 (「見知らぬ女」;1883)
<クラムスコイ画>

今回のように国外に貸し出されていることが多く、トレチャコフ美術館ではあまり見られないらしい。ネフスキー通りで幌を上げた馬車から見下ろしているモデルは不明である。当時この絵を見た人々は、アンナ・カレーニナやナスターシャ・フィリポヴナ(『白痴』の登場人物)を連想したそうだ。私は後者のイメージを感じた。

絵の前で左右あちこちから見ると表情が変わってみえる。向かって正面やや左からがよいと思った。人物はもとより黒の豪奢な衣装の描写が美しい。誇り高く、挑むように寄せ付けないような、それでいて潤んでいる瞳が非常に印象的。


「冬の道」(1866)<カーメネフ画>
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展示解説によれば、ロシア絵画の特徴は「冬」、「道」、「古い地主屋敷」である。「白樺」、「橇」も入るだろう。


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パーヴェル・トレチャコフの肖像
(レーピン画:この絵は今回来日していない)
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パーヴェル・トレチャコフ (1832-1898)(左)は、紡績業で成功した実業家。慈善活動の傍らロシアの美術品を収集。移動展派を支持していた。ギャラリーを作って1880年代から収集品を一般に公開した。それらの作品は、1892年、モスクワ市に寄贈され、革命後は国に移管された。弟セルゲイの収集品も併せた美術品がトレチャコフ美術館の中核をなす。現在、コレクションは10万点となっている。
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by itsumohappy | 2009-04-17 22:44 | 展示会 | Trackback | Comments(4)