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2009年 02月 05日

北方四島渡航時における出入国カードの要求問題

2009年1月、北方領土への人道支援物資(医療器具約1.9トン:約950万円相当)を積んだチャーター船「ロサ・ルゴサ」号が、ロシア側から出入国カードの提出を要求されたため、物資を渡すことなく根室に引き返した。日本人の北方領土への入域は、これまで日ロ政府間で交わされた取決め(日ソ外相間往復書簡ほか)により、旅券・ビザなしで行われている。当然日本政府は、出入国カードの提出はロシアの四島への主権を認めることになるとして反発している。

  入域手続きは、はしけで島から来るロシア側の係官を待って船中で行われる。
  国後島古釜布沖で停泊中の「ロサ・ルゴサ」号(2007年5月のビザなし渡航時)
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北方四島への日本人の渡航に関する枠組は、以下の通り。

1.四島交流(ビザなし交流)
1991年4月に訪日したゴルバチョフ大統領の提案をきっかけに92年来毎年実施されている、日ロ相互の訪問事業。日本人の四島訪問には、旅券・ビザは要らないが、日本外務省発行身分証明書及び挿入紙が必要。元島民とその家族、四島返還運動の関係者、報道関係者、学術専門家等が参加できる。日本人の訪問先は、ロシア人住民がいる色丹、国後、択捉(歯舞群島には国境警備隊しかいない)。ロシア人の訪問先は道内が多いが、近年の実績を見ると東京、愛知、京都、佐賀等もある。
2.自由訪問
1998年、小渕首相・エリツィン大統領によるモスクワ宣言に基づき99年開始された。元島民とその家族(配偶者/子)が対象で、四島交流と異なり歯舞群島の訪問が可能。
3.墓参
元島民とその家族による墓参は、1964年から開始された。76年、ソ連が旅券・ビザを要求したため10年間中断したが、従来どおりの身分証明書による渡航方式により86年再開された。四島には日本人墓地が52ヵ所ある。
4.人道支援
1992年、ソ連崩壊後の混乱で困窮した四島ロシア人住民支援のため、外務省「支援委員会」による発電所など施設建設等の事業が開始された。支援委員会廃止後は、患者の受入れ、地震等災害時の緊急支援、人道支援物資の供与が行われることとなった。このうち、人道支援物資供与事業を、外務省の補助金事業として「千島歯舞諸島居住者連盟」が2003年、引き継いだ。

今回の出入国カードの問題で入域できなかったのは、この4の事業の訪問団(千島連盟と外務省の関係者)。

外務省は、「ロシア側が、北方四島への人道支援物資を搬入する直前になって、(中略)「出入国カード」の提出を一方的に要求してきた」(1.28プレスリリース)と表明したが、カードの問題は今回突然出てきた話ではない。

ロシアでは、02年の連邦法改正で入国審査の書類提出が義務化された。
08年10月、来道したロシア外務省サハリン州代表が、「09年以降、日本人に対する出入国カード記入が求められることになる」と発言し、北海道新聞(10月20日)をはじめ日経、読売、毎日でも報道された(21日)。03年6月にも、ロシアがビザなし渡航団に出入国カードを要求したという記事がある。(6月24日北海道、25日読売新聞)

つまり、前々からロシア側は「警告」を発していた。この度、船が引き返したのは半ば予想された事態とも言える。今回、人道支援事業関係者7人だけの渡航で、一般民間人は乗船していなかった。ロシアとしては、日本側に多少「配慮」したタイミングで、従来からの要求を通したのかもしれない。

今後、四島に渡航する際には出入国カードが必要、というロシアの主張がもし変わらなければ、日本政府は渡航事業を止めるのだろうか。ビザなし交流も17年間行われ、相互理解・友好という当初の目的はある程度達成されたと言われる。ロシア人住民の生活レベルも向上した今日、交流・支援事業がもし中止になってもロシア側は格別困ることもなさそうだ。とはいえ、島民は医療品を必要としているので、国後島の地区長は、来道の機会に根室で物資を受け取るという意向を示したらしい。

    爺爺岳(国後島)
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麻生首相は、今月半ば、メドベージェフ大統領の招待を受けて、「サハリン2」からの天然ガス輸出開始の式典に出席するため、日本の首相としては初めてサハリンを訪問する予定である。その際行われる日ロ首脳会談で、或いは首脳会談までに、この問題がどう解決されるか関係者は注視しているだろう。

(2009年1月23・29・30日、2月5日北海道、1月29日朝日、1月30日読売新聞、外務省のサイトより)
(四島交流実績はこちら参照)
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by itsumohappy | 2009-02-05 23:15 | 歴史・領土問題 | Trackback | Comments(2)