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2009年 01月 18日

映画 『チェチェンへ アレクサンドラの旅』

d0007923_22334531.jpgアレクサンドル・ニコラエヴィッチ・ソクーロフ監督の最新作。原題『アレクサンドラ』。
往年のソプラノ歌手、ガリーナ・ヴィシネフスカヤ(1926~)がタイトルロールを演じている。2004年、戦下のチェチェンの首都グローズヌイなどでロケが行われた。

物語は、アレクサンドラ・ニコラエヴナ(ソクーロフ監督の名前の女性形になる)が、カフカスのロシア軍駐屯地で活動する将校である孫に会いに行き、駐屯地(本物だそうだ)の兵士や周辺の地域住民と触れ合うというシンプルなもの。映画では「カフカスでの長い戦争」という言葉や破壊し尽くされた建物で、チェチェンが舞台であることを示唆している。戦闘を暗示するシーンがちらっと出てくるだけで、武器を実際に使っている場面はない。砂ぼこりの絶えない駐屯地で、劣悪とも言える汚いテント生活を送り、掃討作戦に携わるまだあどけない顔の兵士たちを見たらどう感じるか。街を破壊したロシア兵たちを地元民はどのように思っているか。アレクサンドラは、周辺をよたよたと歩き回りながら観察する。映画は、普通の人が自然に持つであろう感情を表現していて、反戦を声高に訴えるといった政治的な意図はあまり感じられない。

d0007923_22271755.jpg場面に余計な説明はなく、観客の想像に委ねている部分も多い。アレクサンドラは、たった2日間の滞在ではごく表層的なものにしか気づいておらず、日々戦闘に従事して、人もおそらく殺し、明日の命も知れない孫や、親しくなったロシア語の堪能な優しいチェチェン人女性の複雑な気持ちまで理解しきれていないのでは、と思わせる。

ソクーロフ監督は、『アレクサンドラ』を制作した理由を「単純な話は普遍的であり、誰にでも起きることだから」とし、「舞台がイラクでも通じる」と語っている。この映画は、プーチン大統領(当時)のお気に召さず、当局の嫌がらせによりロシアの上映館では、公開時十名弱の観客しか集まらなかったそうだ。

画面の色が意図的なのかかなり茶色く褪せていて、暑苦しさが伝わってくるよう。ところどころにうっすらとヴィシネフスカヤの1940年代の歌声が流れる。

現在、ユーロスペース(東京)で公開中。順次全国公開の予定

  ガリーナ・ヴィシネフスカヤ。右は夫の故ロストロポーヴィチと
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(参考:2007年12月16日北海道新聞、Proline Filmのサイト、文藝春秋『本の話』2008年)
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by itsumohappy | 2009-01-18 22:42 | 映画 | Trackback | Comments(2)
2009年 01月 10日

最近の話題から

最近の報道からロシアに関する話題を紹介します。

●天然ガス供給紛争の不透明な背景
2008年12月31日、ロシアとウクライナの天然ガス価格交渉が決裂したことをきっかけに、ロシアはウクライナ経由の欧州向けガスの供給を停止した。09年1月13日、EU監視団の派遣を受けて一旦ガス輸送が再開されたが、ガス価格の契約交渉が進展しないため、依然不安定な供給状態にある。欧州の17カ国がガス停止の影響を受け、なかでも備蓄のほとんど無いセルビア、ボスニア・ヘルツェゴヴィナが深刻な状況に陥った。EU諸国の消費する天然ガスの約4分の1はロシアからの輸入であり、その8割がウクライナ経由のパイプラインで運ばれている。

輸送停止の理由としてロシアは、「ウクライナによるガス抜き取り」と「料金滞納」を挙げている(ウクライナはガス抜き取りについては否定。一方、延滞料などを含む滞納分約20億ドルのうち7割強は既に支払い済みと表明した)。06年にも料金改定を巡って起きたガスの供給停止は、新欧米政権が誕生したウクライナに対するロシアの圧力と見られた。この06年の紛争解決の際、ロシアは、ガス供給のための仲介企業の参入をウクライナに認めさせた。

主要な仲介企業が「ロスウクレエネルゴ」社。06年からロシア産を含む中央アジア産のガスを、ウクライナ(及び同地経由の欧州)へ独占的に供給している。04年に設立された同社はスイスに拠点を置き、ロシアのガスプロムが50%、オーストリアのセントラルガスホールディングAGが50%出資している。セントラル社の全株式は、ウクライナの実業家2名が保有する。ロスウクレエネルゴ社については、06年、ロシア、ウクライナの絡む贈収賄疑惑が取りざたされ、両国議会でも問題となった。

ウクライナのティモシェンコ首相はかねてよりロスウクレエネルゴ社を汚職の温床とみなし、同社の排除を訴えている。ウクライナ国内へのガス供給は、ロ社の子会社ウクレガスエネルゴが収益の高い産業界に、ウクレガスエネルゴ社から供給を受けるナフトガス(ウクライナ国営ガス会社)が利益率の低い家庭向けに行っており、ナフトガスの経営は悪化しているという。

ガス供給停止の背景には、「ナフトガス輸送網掌握によるロシアの権益確保」「NATO及びEU加盟を目指すウクライナに対するロシアの圧力」「ウクライナを迂回するバルト海経由のロシアパイプライン計画のアピール」などが伝えられている。なかでも、ロシアのエネルギー専門家は、ガスプロム及び仲介企業がプーチン首相周辺の租税回避先であるため、ウクライナがロシアに求めたこれら仲介企業の排除が「ロシア側の機微に触れた」ことを指摘している。

   ガス停止の影響が欧州各地に広まっている
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  (SOURCE: BBC 09/01/2009)
【2009年1月3日ロイター、8日毎日、日本経済新聞、10日BBC、13日朝日新聞より】

●ロシア憲法改正により大統領任期が延長される
2008年12月30日、メドベージェフ大統領は、大統領任期を現在の4年から6年に延長する憲d0007923_2161861.jpg法改正法案に署名した。このほか、下院議員の任期も4年から5年に延長された。実質的な憲法改正は93年制定以来はじめて。次回選挙から改正が適用される。メドベージェフ大統領がこの改正の意向を示した11月5日から2ヶ月経たないうちに、上・下院、83地方の議会における審議が終了した。プーチン首相の大統領返り咲きが取りざたされているが、同首相は、職にとどまり経済危機に対処することを表明している。

【2008年12月31日毎日新聞、ワシントン・ポストより】

●ロシア政府、公的支援対象企業のリストを公表
2008年、ロシアでは、グルジア紛争に続き金融危機及び原油価格急落の影響を受けて、資本の国外退避が加速。08年10月の1カ月で約500億ドルが流出した。株価指数は08年、5月のピーク時から7割下落。原油価格1バレル95ドルを想定して編成された09年度予算は、70ドルを下回ると赤字であり、大幅な見直しが必要となった(1月9日現在1バレル=約42ドル(WTI2月物))。
08年12月25日、ロシア政府は、経営破たんが懸念される基幹産業を救済するため、今後国が減税措置等を行う企業295社のリストを公表した。エネルギー、運輸、鉄鋼等25業種にわたり、ガスプロム、ロスネフチなどエネルギー関係が35社と最も多い。今後も支援を受ける企業が順次リストに追加される予定。
【2008年12月23日イタルタス、31日日本経済新聞、フォーリンアフェアーズ2009年1月号より】

●人工衛星等の打上げ、2009年は39回を予定
ロシア航空宇宙局は、2009年に打ち上げる人工衛星の発射を39回予定している。このうち半数が商業利用。08年の27回、07年の26回を上回る記録的回数である。グロナス衛星システム(ロシア版GPS)の拡充も金融危機の影響を受けることなく予定どおり行われる。同システムの衛星数を現在の19から2011年までに30に増やす。08年は6つ打ち上げられた。このシステムに07年は3.6億ドル、08年は26億ドルの予算が充てられた。

    主要な発射場であるバイコヌールには15の発射台がある
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   (写真:JAXA)
【2008年12月29日RIAノーボスチより】

●ソルジェニーツィン氏の全集刊行へ

ソルジェニーツィン(1962年)
d0007923_2110380.jpg2008年8月死去した作家ソルジェニーツィン氏の誕生日に当たる12月11日、ロシア各地で追悼行事が行われた。ナタリア夫人によれば、今後数年かけて30冊に及ぶソ氏の主要な著作集が出版される予定であるという。夫人は、将来は、氏の誕生日に新設されたサイトで、著作メモ等も含む全ての作品が公開されることを望んでいる。既に短編や『イワン・デニーソヴィチの一日』の朗読版などが掲載済みである。


       作家は遺志によりドンスコイ修道院に葬られた 
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【2008年12月11日AP、12日Russia Beyond the Headlinesより】

●日清カップヌードル、ロシア進出へ
2008年12月26日、日清食品ホールディングス(株)は、アングルサイド社(本社キプロス)と資本業務提携し、ロシアのカップめん市場に進出することを表明した。アングルサイド社は、ロシアの即席めんトップシェア(41%)会社マルベン社の持株会社である。
ロシアは、即席めんの年間総需要が08年推定で約20億食(世界第9位。年間一人当たり約14食)の大量消費国。近年ロシアでは、めん類を含む高品質・高価格帯の食品の販売比率が拡大している。日清は、将来的には周辺CIS諸国をも視野に入れ、販路を拡大する計画である。即席めん製造の技術指導、援助も行う予定。
【2008年12月26日日本経済新聞、日清食品HDのサイトより】
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by itsumohappy | 2009-01-10 21:22 | ロシア | Trackback | Comments(6)