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2008年 01月 22日

正教会の聖歌

2005年9月にロシアへ旅行にいったおり、モスクワ郊外にあるトロイツェ・セルギエフ大修道院を見学した。同修道院は、ロシア正教の総本山であり、数多くの信者の団体があちこちの礼拝堂で一心に祈り、歌っている姿が印象的だった。
見学窓口でカメラ券を買ったらおまけにCD(下)をもらった。ここの大修道院で録音されたモスクワ調、キエフ調の聖歌や説教がおさめられている。柔らかく響く多重唱を聞いているといつも気が遠くなって昇天してしまいそうな感じになる。
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正教会では、楽器が一切使われない。言葉による礼拝が重視されてきた伝統による。祈祷書も歌うように読まれ、聖職者の条件のひとつは声がよいことであるといわれる。

正教会の聖歌は、ユダヤ教の伝統及び古代ギリシャ・ローマの文化の影響も受けて、地域ごとに発展したもので、統一されていない。キリスト教がローマ帝国の国教となった4世紀から10世紀頃まで聖歌が創作された。東ローマ帝国で発展したビザンツ聖歌は、信者が掛け合いのように合唱を繰り返すのが特徴で、そのスタイルが今日に伝えられた。正教がロシアに伝道されたのは10世紀頃である。スラブ語で祈祷文が歌われた。

日本に正教の聖歌が伝わったのはニコライ・カサートキンの伝道後。1871年頃には、函館で、日本人信者が聖歌を合唱していた。これが、日本における混声四部合唱が発祥したときとされる。

私の持っている正教の聖歌CDをもうひとつ。
d0007923_1214415.jpg「晩祷」
ワレーリー・ポリャンスキー指揮
ソヴィエト文化省室内合唱団
イリーナ・アルヒーポワ(メゾソプラノ)
ヴィクトル・ルミャンツェフ(テノール)
録音:1986年(メロディア) 
 

ラフマニノフの作品(1915年)で、全15曲。伝統的な聖歌を踏まえて作曲された。聖歌なので合唱のみ。声がまるでオーケストラのように多彩に響きわたる。
「晩祷」は、宗教が否定されていたソ連時代は上演の機会がなく、長い間日の目を見なかった。ラフマニノフは、1917年の10月革命後、亡命し、アメリカに移住した。

日本正教会のサイトによれば、正教会の礼拝(奉神礼)の中心となるのは、「聖体礼儀」で、主ハリストス(キリスト)の復活を記憶する毎日曜と正教会の祭日(降誕祭などの十二大祭や復活祭)に行われる。これは、カトリックのミサ、プロテスタントの聖餐式にほぼ相当する。聖体礼儀の準備のための祈りが「徹夜祷」である。ラフマニノフのこの作品は、「徹夜祷」のために作曲された。「晩祷」及び英語タイトルVespersは、「徹夜祷」を構成するひとつである「晩課」の意味なので、訳が不正確と言われる。

「晩祷」は和訳だとこんな内容です。(実際の「徹夜祷」には曲目が足りない)
1. 来たれわれらの王、神に  
2. わがたましいや主をほめあげよ
3. 悪人のはかりごとに行かざる人はさいわいなり
4. 聖にして福たる常生(じょうせい)なる天の父
5. 主宰や今 なんじのことばにしたがい
6. 生神童貞女(しょうしんどうていじょ;マリアのこと)や喜べよ
7. いと高きには光栄
8. 主の名をほめあげよ
9. 主よなんじは崇めほめらる
10. ハリストスの復活を見て
11. わが心は主を崇め
12. いと高きには光栄 神に帰し
13. 今 救いは世界に
14. なんじは墓より復活し
15. 生神童貞女讃歌

【参考】「時課」の祈り(日本正教会のサイトより)
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正教会では「創世記」に従い、夕方から一日が始まる。一日をテーマに沿って8つの時間に分けて祈るのが原則である。しかし、現代では一部省略し、「徹夜祷」として、「晩課」「早課」「一時課」をまとめて行い、翌朝の「三時課」「六時課」に続いて「聖体礼儀」を行う。


(1993年10月13日北海道新聞、「東方正教会の聖歌と奉神礼」のサイト、日本正教会のサイトより)
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by itsumohappy | 2008-01-22 01:38 | 音楽 | Trackback | Comments(2)
2008年 01月 13日

リトビネンコ事件の余波

2006年11月に、ロンドンでポロニウム中毒死した元FSB(ロシアの連邦保安庁)中佐リトビネンコ氏の事件は未解決のままである。英捜査当局は、07年5月、元KGB(FSBの前身)工作員で実業家のルゴボイ氏を容疑者と断定し、ロシアに身柄引渡しを要求したが、7月、ロシアは引渡しを拒否した。

モスクワの英国大使館
d0007923_160182.jpgこのため、同月、英国がロシア外交官4人を国外退去処分にしたことに対抗して、ロシアも英外交官4人を追放し、加えて政府関係者への渡航ビザ発給や英国との対テロ協力を停止する措置をとった。
ルゴボイ氏は、07年12月のロシア下院選で当選。不逮捕特権を得たが、欧州各国に入れば逮捕される。

リトビネンコ氏暗殺事件による両国関係の緊張が続いている。
07年11月末、BBC放送モスクワ支局員が襲撃され負傷する事件が立て続けに起きた。
12月、ナーシ(プーチン大統領支持の青年組織)が在モスクワ英大使館前でデモを行い、駐ロ大使の召還を要求。ナーシは、大使のスピーチを妨害するなどストーカー行為を行っているという。

また同月、ロシア外務省が、英国の文化交流機関ブリティッシュ・カウンシルのモスクワ事務所以外の地方15箇所の活動を「違法活動」として、08年1月1日以降禁止すると発表した。これについてラブロフ・ロシア外相は、リトビネンコ事件による外交官追放を受けた措置と語った。カウンシルの活動は両国間の文化協定に基づくものと英国政府は主張。カウンシルは、両国市民の文化交流に政治的圧力があってはならないとして、ロシア当局の警告を無視してエカテリンブルクの事務所を年末年始の休暇明けに開いた。サンクトペテルブルクの事務所も活動を継続すると発表した。
(☆追記:その後カウンシルは、1月17日、エカテリンブルク及びサンクトペテルブルク事務所の一時閉鎖を発表した。ロシア当局は、法令に沿えばカウンシルの活動は認められるとしている。)

英国の王立芸術院で1月26日から開催されるロシア美術の絵画展への貸出が、「作品返却の保証が不十分」として先月末に差止められた事件も、政治的緊張が影響したものと見られている。

この展示会は、エルミタージュ、トレチャコフ、プーシキン、ロシアの各美術館から出品される大がかりなもので、すでに前売りも行われていた。ロシア側の許可が下りて予定通りの開催が決定したのは1月9日。関係者はさぞ落ち着かない日々だったことだろう。

(2007年7月20日日経、12月7日産経新聞、12月14日BBC、12月16日毎日新聞、2008年1月9日モスクワタイムズ、ブリティッシュ・カウンシルのページより)

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王立芸術院の展示会の目玉は、マチスの「ダンス」。ロシア革命以前はモスクワの富豪シチューキンのコレクションだった。エルミタージュやプーシキン美術館に所蔵されている主なフランス近代絵画は、革命により個人コレクターから国の所有となったもので、海外貸出の際、コレクターの遺族から返還要求されて絵の出国が差し止められる可能性が全くないとはいえない。
     
 
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by itsumohappy | 2008-01-13 16:29 | その他 | Trackback | Comments(6)
2008年 01月 06日

北を目指すロシア

2007年5月、「国連の気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)は、地球温暖化現象により、この100年で北極の気温が、世界全体の平均気温のほぼ2倍の速さで上昇していると発表した(第1次作業部会報告書)。このため、21世紀後半までに夏の北極海から海氷がほぼ完全に消滅するという新見解も現れた。

北極周辺には世界の未発見の原油・天然ガスの最大25%が埋蔵されている(米地質調査所)と言われ、他にもニッケル、ダイヤモンド、マンガン鉱床があるとされる。北極への航行が容易になれば、これらの埋蔵資源開発が可能となる。

北極では、領有権が主張できない南極と異なって、沿岸国は、「海洋法に関する国連条約」に基づいて海岸線から200海里の「排他的経済水域」を設定できる。さらに、「大陸棚の限界に関する委員会」(CLCS)が「領土の自然延長」と認定すれば、最大350海里までが大陸棚となり、地下資源の独占開発権を得られる。

ミール1号
d0007923_1713671.jpg2007年8月2日、チリンガロフ・ロシア下院副議長率いるロシア遠征隊の潜水艇ミール1と2が、北極点海底に着地して約9時間調査を行い、ロシア国旗を建て「北極はロシアのもの」とアピールした。
(ただ、この調査活動については、オーストラリアとスウェーデンの富豪が費用の大半を出した「旅行」であり、科学的な探査活動ではないとも報じられている。)

ロシアは、01年、CLCSに「ロモノソフ海嶺」等の大陸棚認定を訴えたが、証拠不十分で却下され、調査結果の再提出が求められた。チリンガロフ氏は、08年にはボーリング探査を行うと語っており、ロシアは、09年に開催されるCLCSに向けてデータ調査を開始したともされる。
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白地は2005年夏に氷結した海域
概念図出典:University of Durham, UN

沿岸国であるカナダ、デンマークは、ロモノソフ海嶺は自国に連なると主張。北極点はノルウェー以外の4カ国が領有を主張する可能性がある。しかしながら米国は、「海洋法に関する国連条約」を批准していないため、開発権争奪戦に出遅れている。
専門家は、北極圏の埋蔵資源の多くはロシア領内にあるが、開発技術面で劣るロシアには国際協力が不可欠と指摘している。

最大の懸念は、北極の開発が進めば、温暖化がさらに進行する可能性があることでしょうか。
(2007年8月22日朝日、10月21日日経、2008年1月3日読売新聞より)

大陸棚と200海里
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200海里≒370km
図:AllAboutから作成
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by itsumohappy | 2008-01-06 17:28 | その他 | Trackback | Comments(4)