カテゴリ:演劇( 11 )


2015年 12月 08日

マリインスキー・バレエ「愛の伝説」

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マリインスキー・バレエ「愛の伝説」の感想です。(11月27日/東京文化会館)

【出演】
バヌー/ウリヤーナ・ロパートキナ
シリン/クリスティーナ・シャプラン
フェルハド/アンドレイ・エルマコフ
大臣/ユーリー・スメカロフ

マリインスキー歌劇場管弦楽団/アレクセイ・レプニコフ指揮
振付:ユーリ・グリゴローヴィチ

報道によれば、「愛の伝説」は、日本では37年ぶりの全幕上演とのこと。あまり観る機会がなさそうなので、平日で心配だったけれども直前に購入。開演前に行われたトークには間に合わなかったが、舞台にはぎりぎり間に合ってよかった。初め土曜公演にするつもりだったが、やはりロパートキナの名演を見ることができて何より。

1961年、マリインスキー(キーロフ)劇場で初演されたこの作品は、トルコ出身でソ連に亡命した共産主義者の詩人、ナーズム・ヒクメットの戯曲に基づく。音楽はアゼルバイジャン出身のメリコフが作曲。舞台は中近東の設定のようだが、装置も衣装も簡素・単純で、あえてきらびやかさは避けている印象。というのも、この作品が、よくバレエにあるおとぎ話ではなく、自分の幸福を犠牲にしてでも、苦しむ人民のために尽くす、というお話のためか。そういう共産主義プロパガンダ?風なことが、日本でほとんど公演されなかった理由のひとつかも。

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心情を表す動・静の様々な群舞の構成で、物語が進行する感じ。踊りそのものを楽しむバレエ。他のグリゴローヴィチ作品「スパルタス」のように男性の群舞も多い。ソ連時代のある種の様式美はこのようなものだったのだろう。

ロパートキナは、体が| ̄| 形に裏返しになるようなしなやかさ。怒りめらめらで、ただ座っていてもその気が満ちるような別格の存在感である。
大柄な大臣も堂々とした演技。マリインスキーの新生というシャプランは普通に上手なのだろうが、素人の私にはどの辺りが特別かはよくわからなかった。

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by itsumohappy | 2015-12-08 13:39 | 演劇 | Trackback | Comments(0)
2015年 11月 26日

シュツットガルト・バレエ「オネーギン」

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シュツットガルト・バレエ「オネーギン」の感想です。(11月21日/東京文化会館)


【出演】
タチヤーナ/アリシア・アマトリアン
オネーギン/フリーデマン・フォーゲル
オリガ/エリサ・バデネス
レンスキー/コンスタンティン・アレン
グレーミン侯爵/ロバート・ロビンソン
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団/ジェームズ・タグル指揮
音楽: ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー  クルト=ハインツ・シュトルツェ編曲
振付:ジョン・クランコ


3年ぶりの来日だが、「オネーギン」の日本公演は、2008年以来とのこと。このバレエ団を有名にした「オネーギン」は、団員にとって神聖な演目だそうだ。

ロシアの国民的詩人・プーシキン作の『エフゲニー・オネーギン』はオペラや映画になり、そのうち私が観たものはどれも心に残った。バレエとなると原作を忠実に反映するのは難しい部分もあり、多少端折らざるをえないが、それでもこのバレエは期待以上に素晴らしく、魂のこもった大変感動的な舞台だった。終幕では、あちこちからすすり泣きが聞こえていたほどだ。

d0007923_2384288.jpgオネーギンを演じたフォーゲルは、これまでレンスキーを主に演じており、日本で「オネーギン」全幕の主演を務めるのは初めてだったそうだ。じっと座ってカードめくりするだけでも、気取り屋の余計者の雰囲気がよく出ていた。レンスキー、グレーミン侯爵も原作のイメージどおり。アマトリアンのタチヤーナも熱演だったが、若干大人すぎか。

ベージュ、白を基調とした衣装で、全体としては地味に見えるかもしれないが、品がよい。超絶技巧の連続技みたいなものはなくとも、群舞のシーンなど舞台を斜めに行き交ったりして見応えがあった。音楽は、チャイコフスキーの楽曲を編曲しているそうで、オペラの「オネーギン」を使っていない。却ってそのほうが自由なイメージになってよいかもしれない。



「オネーギン」が心を打つのは、帝政ロシア期の話であっても、青年期の熱情や夢、或いは絶望、さらには傲慢さ、軽薄さ、老いては分別、諦めなど人々の様々な感情が織りなすドラマであるからだろう。おとぎの国や悪魔・精霊が出てくる、よくあるバレエ作品とは印象が異なる。

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by itsumohappy | 2015-11-26 23:13 | 演劇 | Trackback | Comments(0)
2012年 01月 31日

ボリショイ・バレエ 「スパルタクス」

ボリショイ・バレエ「スパルタクス」の感想です。(1月31日/東京文化会館)

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【出演】
スパルタクス:イワン・ワシーリエフ
フリーギア:スヴェトラーナ・ルンキナ
クラッスス:アレクサンドル・ヴォルチコフ
エギナ:エカテリーナ・シプーリナ
ボリショイ劇場管弦楽団/指揮 パーヴェル・ソローキン
音楽:アラム・ハチャトゥリアン

6年間の修復を終え、新装なったばかりのボリショイ劇場が引越し公演(1月27日~2月12日)。地震と放射能を心配していたと思うが、よくぞ来日した。都内の初日は、「スパルタクス」。古代ローマの剣奴の反乱(紀元前73-71年)を題材に、ユーリ・グリゴローヴィチが振付したバレエで、1968年初演された。

この演目のパリ公演(2008年)をたまたま録画で見ていたが(スパルタクスを客演したカルロス・アコスタが印象的だった)、実際観られる機会が少なそうなこともあって、先週チケットを購入。平日夜でも劇場の9割近くが埋まっていた。ワシーリエフがミハイロフスキー劇場に移籍したけれども、予定通りのキャスティングで行われた。

この作品は、ダイナミックな音楽にのって力強さでおしまくる勇壮な「男性バレエ」で、衣装も派手ではない。言うなれば、バレエという感じのしないバレエ。炸裂する管弦楽はやはり生の舞台ならでは。
主演のワシーリエフはわりと小柄で、どんなスパルタクスかと思いきや、ゴム鞠のごとくかなりの気合で最初から最後まで飛び跳ね、かつ、スピーディなー切れのよさを披露して喝采を浴びていた。
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撮影:Damir Yusupov

シプーリナのエギナも濃いキャラクターのせいか心に残る演技だった。対して、ルンキナのはかなさはややわりを食う感じになった(そういう役柄なので仕方がない)。
半ばでヴォルチコフの着地が失敗し、その後、やや足を引きずったのでどうなることか心配だったが、後半は無事に踊りきった。あと、兵隊さんの数がもう少し多いとより迫力が増しただろう。
前回来日時よりずっと円高のはずだが、チケットの価格帯は変わらない印象である。もう少し何とかならないものだろうか。

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改装されたボリショイ劇場のメインロビー
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by itsumohappy | 2012-01-31 23:45 | 演劇 | Trackback | Comments(0)
2008年 12月 07日

ボリショイ・バレエ「ドン・キホーテ」

d0007923_2344065.jpgボリショイ・バレエ「ドン・キホーテ」の感想です。(12月3日/東京文化会館)

2007年9月のマリインスキー・バレエ&ボリショイ・バレエ合同ガラ公演で、ドン・キホーテ/第3幕のパ・ド・ドゥにマリーヤ・アレクサンドロワ(キトリ)とセルゲイ・フィーリン(バジル)が登場し、アレクサンドロワのかっこ良さが大変印象に残ったので、同じキャスティングであったボリショイ公演を売り出し同時に買った。その後、2回の配役変更で、バジルはドミトリー・ペロゴロフツェフになったが・・・。アレクサンドロワが予定通り出演してよかった。そもそも平日公演で行かれるか心配だったけれども無事鑑賞できた。

開演前に、年内でボリショイを退任するラトマンスキー芸術監督からお話が少々。王子王女ものでなく、民衆が主体の「ドン・キホーテ」は、(帝都であったペテルブルクよりも)モスクワで人気の演目らしい。150年間ロシアで踊り続けられ、ボリショイでは「モスクワ・スタイル」ともいうべきダイナミックな踊りが見どころ。振付をしたプティパは、「ドン・キホーテ」に出演するためにロシアにやってきたそうだ。

      アレクサンドロワ。第一幕より(Photo: Alexandra Kocitsina)
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明るく楽しい、元気な舞台にアレクサンドロワはぴったり。めりはりきいて力強く、表情を見ていても楽しくってたまらないみたいな気持ちが伝わってくる。どう?私の踊り、存分に観て頂戴というゆるぎない自信に溢れていて小気味よい。真面目そうなペロゴロフツェフは一歩引いてアレクサンドロワを立てていたように見えた。
2幕目の優美な夢のシーン、きれいでした。

踊りがよくついていけるなぁと感じるほど音楽がスピーディー。闘牛士たちのシーンではマントをハイスピードでそろってくるくる回す。闘牛士の筆頭?を演じていた端正なアンドレイ・メルクーリエフ、ロマの踊りを情熱的に踊ったアンナ・アントロポーワが印象に残った。とはいえ、どの出演者も実にたいしたものです。

楽団も合わせ大勢の所帯のせいか料金もそれなり。他の演目までなかなか手が出ない。
日本初演の「明るい小川」はどんな感じだろう。
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by itsumohappy | 2008-12-07 23:10 | 演劇 | Trackback | Comments(4)
2008年 07月 12日

ホリプロ 『かもめ』

今年3月に開館した赤坂ACTシアターのオープニングシリーズのひとつ、チェーホフの『かもめ』に藤原竜也らが出演。7月10日夜公演(東京・赤坂ACTシアター)の感想です。
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約1,300人入る大劇場では、古典的な演劇の場合、舞台が発する「気」が拡散し薄れてしまう。特に席が後ろのほうだと、『かもめ』のような地味な劇をじっくり味わうのは難しい。チケット取ったのが遅かった割にはまずまずの席だったのだが、それでも舞台と一体感を得るには遠かった。

栗山民也氏の演出は手堅い。原作どおり丁寧に展開していて安心と言えば安心である。しかし、21世紀のきょうび、『かもめ』を新劇場で大々的にやるからには、何か斬新なところが欲しいと感じた。
沼野充義氏の翻訳には今世紀の言葉が混じるのだが、唐突にそれらをせりふに入れても、設定は19世紀ロシアのままであるから、違和感が出るだけである。重厚な古典的演出とも言い切れないし、どの演者もそれなりによかったので、一種中途半端さが少々もったいない気がした。簡素な舞台装置、衣装ですむこの劇に、お金をかけるとすればキャスティングなのだろうか。

トレープレフ、ニーナ、マーシャは、はりきっています!という感じの、若さあふれる全力投球演技。それはそれでよいと思う。トレープレフ、ニーナは、早口になるとせりふが聞き取りにくかった。そこいくとアルカージナ、トリゴーリンの演技はさすがで、緩急、間合い、笑いの取り方も自在である。

『かもめ』では、見果てぬ夢、かなわなかった夢、あきらめの人生、あきらめない人生等の様相が描かれている。10代の人も多く見受けられた公演だが、原作を読まずに観た場合、そのようなチェーホフの世界を、彼らがどう感じたか聞いてみたいものだ。

東京公演は終了。7月18日から大阪、その後8月上旬にかけて広島、愛知で上演されます。

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【キャスト】
トレープレフ・・・藤原竜也
トリゴーリン・・・鹿賀丈史
ニーナ   ・・・美波
マーシャ  ・・・小島聖
アルカージナ・・・麻実れい

ドールン   ・・・中嶋しゅう
シャムラーエフ・・・藤木孝
ポリーナ   ・・・藤田弓子
メドヴェジェンコ・・・たかお鷹
ソーリン   ・・・勝部演之
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by itsumohappy | 2008-07-12 23:32 | 演劇 | Trackback | Comments(0)
2006年 12月 24日

レニングラード国立バレエ 「くるみ割り人形」

d0007923_2284371.jpgレニングラード国立バレエ団の公演は、今年1月に「白鳥の湖」を観たので2回目。カード会社の貸切公演の優待(13,000→6,500円)で席をすぐ買ったので、29列目のほぼ正面で見ることができてよかった。東京国際フォーラムは大きすぎるから、あまり遠いと雰囲気が伝わらない。音響はよいのか音楽はとても柔らかく聞こえた。

「くるみ割り人形」ははじめてで、この演出がどの程度のものだったのかよくわからないが、手堅いというか、まぁこんなもんだろうなーと。

主役その他の超絶技巧を次々見せるような話ではなく、様々な美しい衣装の妖精たちの踊りをチャイコフスキーの音楽とともに楽しむ感じでしょうか。ピンクや白の衣装が華やかに舞う様子に、隣の女の子は身を乗り出していた。
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群舞、きれいだなーという印象はあるのだが、主役の印象はあまり強くない。もちろんきれいに踊っているのだが、強烈な印象を残す・残さないの決定的違いってどこにあるのだろう。容姿なのか技なのか・・両方なんだろうな。

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12月23日 夜公演(東京国際フォーラムA)
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マーシャ:アナスタシア・ロマチェンコワ
王子:アントン・プローム
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by itsumohappy | 2006-12-24 22:18 | 演劇 | Trackback | Comments(5)
2006年 12月 14日

マリインスキーバレエ 「海賊」/「白鳥の湖」

昔、キーロフ劇場と呼ばれたサンクト・ペテルブルクのマリインスキー劇場は250年以上の歴史を持つロシアの名門オペラ&バレエ劇場。パブロワ、ワガノワ、ニジンスキー、ヌレエフ、バリシニコフ等々がここの舞台に立った。現在、指揮者のゲルギエフ氏が芸術監督兼総裁を務める。
今回の来日公演は、1月から始まったロシア文化フェスティバルの一環である。東京文化会館での2公演を観た。
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「海賊」
異国情緒のある色彩豊かな舞台だった。はじめと終わりに出る海上を行く船の舞台装置がリアル。ヒロインを演じたヴィシニョーワは可憐かつ折り目正しい美しさがある。この演目は、男性の見せ場が多いものらしい。実際、アリ役のサラファーノフが拍手喝采を浴びていた。バレエ用語はわからないのでうまく言えないが、スピードとジャンプ、回転のあいまった妙技にうひょーとあっけにとられる(ああ、もう少し洗練された表現をしたいのだが)。会場の感嘆を一身に集めたのではないだろうか。ファジェーエフ(プリンシパルだ)も華あるソリストだ。
上演時間正味90分の作品で、比較的短く感じた。
【12月6日】
メドーラ :ディアナ・ヴィシニョーワ
コンラッド:エフゲニー・イワンチェンコ
ランケデム:アンドリアン・ファジェーエフ
アリ:レオニード・サラファーノフ

マリインスキー劇場
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「白鳥の湖」
「海賊」だけでは見足りなかったので、「白鳥の湖」も買ってみた。音楽の美しさ、見所の多さで人気の演目なのだろう、当日には全席売切で、ダフ屋がいた。
白鳥の群舞が実に実にきれいでまさに夢。腕の流れのさまは本当に飛び立っていきそう。主役を演じたロパートキナというバレリーナはマリインスキーの大看板なのだろう。腕のゆらめき、特に手首から指先の動きが印象深い。美しさや技は当然として、それらに加えて気高さと一種凄みに近い迫力がある。なので、オディールの時がかっこいい。王子役のゼレーンスキーもプリンシパルだが、特に印象に残らなかった。王子の役柄がやや弱いキャラクターだからだろうか。ちょっと疲れた感じで、おじさんぽくみえた。道化のスピーディーな回転技は良かった。この公演は、魔法が解けてハッピーエンドの演出だった。
【12月10日】
オデット/オディール:ウリヤーナ・ロパートキナ
ジークフリート王子 :イーゴリ・ゼレーンスキー
道化:アンドレイ・イワーノフ

マリインスキー劇場内部
d0007923_050748.jpgそれにしてもどの方々も一体全体どうしたらあのような体が作れるんでしょうか!?同じ人間とは思えない・・・。
東京文化会館は、場所は便利だが古いせいだろう、内装が汚くみえる。現地マリインスキーの舞台で見れば、舞の美しさもひときわなのだろうが。マリインスキーバレエの次の来日は3年後の予定。その時はもっと良い席で見たい。
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by itsumohappy | 2006-12-14 01:06 | 演劇 | Trackback | Comments(4)
2006年 05月 19日

ウラジオストク青年劇場 「かもめ」

d0007923_2354939.jpgロシアのウラジオストク青年劇場(青年ドラマ劇場)が来日し、東京でチェーホフの「かもめ」(5月12日~14日)を、岩手県で日本の民話を基にした芝居「うたよみざる」(16、17日)を上演した。
13日、「かもめ」を観に行った。

劇場のシアターX(両国)ははじめてだったが小規模な空間で、演劇をじっくり鑑賞するのにふさわしい雰囲気だった。俳優の演技をじかに感じてもらえるように字幕、イヤホンガイドを使わないという主催者のコンセプトで、せりふは全てロシア語。原題は「ほら、これがおまえの劇場だ」(Вот тебе и театр)。4幕の「かもめ」を作家2人と女優2人の2幕の物語に構成していて、従って登場人物は4人だけ。

舞台装置は、天井から丸ワイヤーに薄い白布が4、5枚くらいに分けて長いカーテンみたいに(カーテンが全部閉じられると白い円筒みたいになる)下げられた台、つまりトレープレフの「劇場」が真ん中に置かれただけの簡素なもの。
開場して、どこに座ったらよいか迷っていたら、劇場の係の方から前のほうを勧められ、ロシア語もわからないのにずうずうしくも一番前の真ん中に座ってしまった。

ストーリーは日本語で読んでいたので、ああ、あそこの場面、あそこのせりふだなぁと見当はだいたいついたが、はじめは慣れなくてしばらく落ちつかなかった。観ているうちにだんだん俳優の表情やせりふ回し(意味はわからないけど)の妙を楽しむことができた。衣装も白を基調としていて全体に品のある舞台だった。

アルカージナは(尊大な)大女優らしく、ニーナは世間知らずの純情な女優志願らしく(都会に出る前だが)。トレープレフは、パンフレットに「今日風に言えばニート」なんてあってなるほどと思ったが、才能への迷いと嫉妬が伝わってきたし、トリゴーリンはまるでチェーホフがもう少し長生きしたらあんな感じかも?と思うような、優しい、しかし人生をよく知っている(世知にたけた)という雰囲気だった。
音楽は、映画「ゴッドファーザー」で使われたものが流れていた。もの悲しいメロディーが劇のイメージには合っていたが、映画のほうをつい想起してしまった。ゴッドファーザーも一種の家族劇だからってことで使用したわけでもないと思うが・・・。

チェーホフは「かもめ」を「喜劇」としている。私には喜劇と感じるまで達観できないので、せめて喜悲劇かなぁと思ったりする。

ウラジオストク青年劇場は、青少年のためのドラマの劇場として1954年に創設され、古典演劇をはじめ、現代演劇、音楽劇などレパートリーが300あり、「かもめ」は、人気レパートリーの1つとのこと(2006年5月11日 毎日新聞)。
今回はたまたまブローグニックさんの紹介で観に行くことができたが、大規模でない演劇公演の情報は外国のものであれ日本のものであれ注意していないと気がつきにくいものだ。

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「かもめ」
企画:ウラジオストク青年劇場 
芸術監督:ビクトル・ガルキン 
出演:
アルカージナ:ガリーナ・コプィロワ(功労俳優)
トリゴーリン:アレクサンドル・ヴォロシャンコ(功労俳優)
ニーナ:ポステルナック・ラリーサ
トレープレフ:アンドレイ・トロフィーモフ

ロシアには、功労俳優とか功労芸術家とか国が優れた芸術家を認定する制度があるようだ。

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ウラジオストクは、札幌市とほぼ同緯度で、1860年に海軍基地として建設された。1890年には沿海州の州都となるなど、ロシア・ソ連の太平洋への玄関口として発展。1952年、軍事上の理由で閉鎖都市となったが、1989年にソ連市民に、1992年に外国人に開放された。

ウラジオストクの名称は、1860年、同地に派遣されたロシア軍に、皇帝が「ヴラジェイ・ヴォストーカム」(「東方諸地域を支配せよ」)と命じたことに由来するという説が有力。
人口は、約61万人(2005年1月現在)で、住民の大多数はロシア人。極東地域最大の都市であるが人口流出が続いており、92年以降、年率約1%の割合で減少している。

1907年(明治40年)に日本領事館が設置された。明治のはじめから日本人が移民しており、1920年代初頭には6000人近くの日本人が居留していたと言われている。
敦賀~ウラジオストク間の連絡船とシベリア鉄道を乗り継いで欧州に向かうルートは、当時の日欧連絡の最速ルートの一つだった。

ウラジオストクは、新潟、富山、大阪から飛行機で2時間弱。富山からは船「ルーシ号」が出ている。新潟市、函館市、秋田市と姉妹都市。
市民の日本への関心は高く、日本総領事館が行っている文化行事は常に盛況らしい。
在ウラジオストク総領事館のHPより) 
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by itsumohappy | 2006-05-19 23:25 | 演劇 | Trackback | Comments(0)
2006年 05月 07日

ボリショイバレエ「ラ・バヤデール」

1776年創立の名門バレエ団が4年ぶりに来日し、「ラ・バヤデール」と「ファラオの娘」というロシアバレエの古典を上演した。ロシア文化フェスティバルの一環であり、また創立230年記念とあって大規模な(ダンサーが多く要る)公演だった。
3日初日、「ラ・バヤデール」(全3幕)を観た。

バヤデールは仏語・英語で「インド(ヒンズー教)の踊り子」のこと。ロシアでは「バヤデルカ」。古代インドを舞台にしたバヤデール、ニキヤの悲恋物語で、台本・振付はプティパ他、1877年初演である。今回の公演では装置、衣装は当時のものを再現したそうだ。

どの幕にも、黄金の仏像の踊り、太鼓の踊り、影の王国の精霊の踊り等、多彩な踊りがあってあきさせない。インド風のようなアラビア風のようなひらひらしてきらびやかな衣装で、華やかさと異国情緒があふれていた。

d0007923_23135678.jpg主役ニキヤを演じたザハーロワはただ立っているだけでも絵になる姿。繊細でたおやかである。肋骨の浮き出るような細い体で、恋人(ソロル)に裏切られて悲しむ場面など信じられないくらい体がしなる。

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ソロル役のツィスカリーゼはミュージシャンのプリンス似の濃い顔。こちらもしなやかで、体を後ろで2つに畳めそうだった。
準主役のニキヤの恋敵ガムザッテイ役のアレクサンドロワもボリショイの看板スターの1人。ザハーロワよりもがっちりしていて(少々太めにも見える)その分踊りも力強い。この役にとても合っていた。黄金の仏像を演じた岩田守弘はボリショイ初の外国人ソリスト。びよーんとマリのように跳躍していた。

その他大勢の演技では、3幕目の影の王国の場面が美しい。舞台奥から闇に白く浮かぶ32人の精霊たちが、少しずつスロープを舞い降りた後、ステージいっぱいに踊る。ただ人数多い分失敗すると目立つ。何でもないシーンだったのに何故かバランス崩して揺らいでしまった(しかも目立つところで)霊が1人2人いた。
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バレエは誰が観てもそれなりに楽しめる演劇だと思う。ただ値段もそれなり(東京公演は1万9千円~5千)なのでそう頻繁には行かれないのが残念。

踊りの場面は公演のページから

【5月3日の配役】
ニキヤ:スヴェトラーナ・ザハーロワ
ソロル:ニコライ・ツィスカリーゼ
ガムザッティ:マリーヤ・アレクサンドロワ

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ボリショイ劇場本館。現在工事中で、新館などで公演が行われている。バレエのレパートリーは40作近く。値段は5月7日の公演(「シルフィード」)を見ると40~1200ルーブル。バルコニー端は半分は見えないので、そこなら正面2階あたりの立見のほうがよい。

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                 (ボリショイのサイトへ↑)
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by itsumohappy | 2006-05-07 22:26 | 演劇 | Trackback | Comments(1)
2006年 03月 26日

ユーゴザーパド劇場 「巨匠とマルガリータ」

d0007923_2358665.jpgユーゴザーパド劇場は、演出家のワレリー・ベリャコーヴィッチ氏が77年に作ったモスクワ市南西(ユーゴザーパド)の労働者街にある120席位の劇場。モスクワ中心部から地下鉄で30分位かかるらしいが、連日盛況の人気劇場だそうだ。この劇団の3度目の来日公演が、ロシア文化フェスティバルの一環として天王洲アートスフィアで行われた。(マクベス/巨匠とマルガリータ 3月21日~26日)
22日、劇団の代表作のひとつ「巨匠とマルガリータ」の公演を観た。

長大な原作なので舞台も3時間強の大作である。あの話を一体どう舞台化したのか興味があった。アイデア勝負というか期待どおりの斬新な演出だったと思う。悪魔の舞踏会のシーンは、トタンをがんがんいわせて半裸の人が踊り狂い、なるほどそれらしくうまいものだった。

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舞台装置は、最初から最後までトタンが8枚ぶら下がっているだけ。世界のあちら側とこちら側を区切る結界的役割で、要所要所で役者はトタンをめくるように飛び出たり引っ込んだりする。動きが激しいときなどトタンの端で怪我しないだろうかと心配してしまった。

d0007923_22552236.jpgベリャコーヴィッチ(左)自身が悪魔の親玉。優しい目をした知的で可愛げなおじさんなので、哲学的でも親しみやすい悪魔だった。手下の悪魔達やヨシュア、ピラトをはじめエルサレムの人々、詩人、そして巨匠とどれもだいたいイメージどおりだったが、若干違和感あったのは肝心のマルガリータ。ロシア人がイメージするマルガリータってあんな感じなのだろうか。野太い声というかどすのきいたような低音で、本当に魔女のようだった。昔の映画「サンセット大通り」のG・スワンソンを思い出した。巨匠がもともと弱いキャラクターなので、マルガリータの一種あくの強さが際立っていた。
(写真はアートスフィアの公演HPより)

ベリャコーヴィッチは、「強力な悪の誘惑に負けず、誠実な人間でいるには悪の本質を知る必要がある。そのことを劇から感じてほしい」と語っている。(3月13日 朝日新聞)
原作者ブルガーコフは「悪が存在しなければ善はどうなる?」と問うた。悪を知れ、というメッセージは、今の日本社会では実に示唆に富んだものだと思う。


************
ロシアではプロの俳優は演劇大学で養成されるシステムらしく、ベリャコーヴィッチ自身もロシアで最難関の国立演劇大学で学んだ。卒業後、地元で劇団を旗揚げした。ここの劇団員のバックグラウンドはいろいろで、伝統的なロシアの劇団とは異質である。ペレストロイカ時代、エジンバラ演劇祭で上演した「ハムレット」をきっかけに世界に知られるようになった。

ユーゴザーパドでは、「演劇はカーニバル」というベリャコーヴィッチのもと30位のレパートリーを上演している。スケジュールを見ると毎日出し物が違う。「ハムレット」、「ロミオとジュリエット」などシェークスピアの作品、「検察官」、「どん底」などロシア古典ものほかいろんなタイプの作品を同じ月にやっている。

アートスフィアはユーゴザーパドの公演を最後に閉館し、改装後ホリプロの劇場になるそうだ。
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by itsumohappy | 2006-03-26 22:50 | 演劇 | Trackback | Comments(2)