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2009年 06月 25日

N・P・オシポフ記念国立アカデミー・ロシア民族楽器オーケストラ コンサート

オシポフ国立民族楽器オーケストラのコンサート(2009年6月23日 於:神奈川県民ホール(小ホール))の感想です。22日に続き、ロシア文化フェスティバルの招待で行ってまいりました。

d0007923_23485635.jpgロシア伝統の民族楽器を中心に編成されたこのオーケストラは、1919年、特殊重砲兵部隊第一砲兵隊に設立されたものが前身。36年にソ連国立民族楽器オーケストラとなった。40年に芸術監督・指揮者に就任したN・P・オシポフの名を冠する。現在の楽団メンバーは約80人。2007年11月に初来日した。今年から、国立ボリショイ劇場オペラ芸術監督(2000-2002年)も務めたウラジーミル・アンドロポフ氏が芸術監督・主任指揮者に就いている(ちらし(左)の人物ではない)。今回は25名編成で来日した。

プロの民族楽器オーケストラの演奏を聴くのははじめて。女性団員はみなおそろいのプラトークをはおって登場。手に手に持つ楽器も見慣れないもので、見た目だけでもロシアらしさ全開という感じ。
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主な楽器は、上のドムラ、バラライカ(三角形)、下のグースリ(机のように置くものと持ち歩きできるものとがある)、バヤン(アコーディオン)など。ドムラ及びバラライカ(それぞれアルト、バスなど種類がある)はかき鳴らすという感じで、体格のよいロシア人男性が持つと何だかおもちゃを扱っているように見えた。

d0007923_23502528.jpgグースリはお琴みたいな楽器で、きらきらした美しい音色である。
バヤンの奏者は、ロシア国内外のコンクールで優勝している実力の持ち主で、ソロで高速な指さばきを披露した。

【プログラム】
(第1部)
チャイコフスキー:「雪娘」より「スコモローヒの踊り」
グラズノフ:「四季」より「小さなアダージョ」
リムスキー・コルサコフ:「熊蜂の飛行」
ショスタコーヴィチ:「管弦楽のための組曲No.4」よりワルツ
ハチャトリアン:「レズギンカ」
ツィガンコフ:「雌鳩」、序曲とチャルダッシュ
グリディン:「コサックはドナウへ向かった」
シェンデリョーフ:「小川に沿って」

(第2部)
「カマリンスカヤ」
ロシアのメロディーの幻想曲
シャロフ:「ワーレンキ」
「細きぐみの木」
「黒い瞳」
「あなたに逢えたら」
「カリンカ」
「荒城の月」
ディテリ:「行商人」
ブランデル:「カチューシャ」
ソロヴィヨフ=セドーイ:「モスクワ郊外の夕べ」
アファナシエフ:「青き湖水を眺む」

*実際の演奏は予定とかなり異なっていて、気がついた範囲で直しましたが、全ての曲はわからないので、上記の中で演奏されなかったもの・足りないものもあるかもしれません。

小さなホールで、演奏者の表情がよくうかがえた。指揮者ともども微笑をうかべ、終始リラックスした柔らかい雰囲気。ロシアらしさも満喫できて、寛げるコンサートだった。
アンコール(「剣の舞」「ラデツキー行進曲」)で気がついたが、普通のオーケストラの音にかなり近い感じにも演奏できるのが意外だった。

観客は高年層主体。「カチューシャ」や「モスクワ郊外の夕べ」では客席がうたごえ喫茶化した。

グースリ弾き(カンディンスキー・1907年)
トレチャコフ美術館所蔵

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by itsumohappy | 2009-06-25 23:58 | 音楽 | Trackback | Comments(4)
2009年 06月 24日

オリガ・アンドリューシェンコ ピアノコンサート

オリガ・アンドリューシェンコさんのコンサート(2009年6月22日 於:銀座・王子ホール)の感想です。

d0007923_23533435.jpgピアノリサイタルは久しぶり。このホール(315席)のようにこじんまりしたところだと、音に浸れる反面、聴衆の身動きやプログラムを触る音などちょっとした物音もけっこう響く(かばんに鈴をつけてはいけませんよ!)。ピアノの音だけだからなおさら感じるのか。最後の音がすぅと消えるまで息をつめて緊張気味?に鑑賞した。

プロフィールによると、アンドリューシェンコさんは1978年モスクワ生まれ。2004年モスクワ国立音楽院大学院を修了。1990年から国内外でコンサート活動を始めた。シューベルト記念コンクールで特別賞(2001年)、スクリャービン記念コンクール及びルービンシュタイン記念コンクール(2008年)で優勝。オルガン、ハープシコードの奏者でもある。

【22日の演目】
グリンカ:アリャビエフの「夜鳴きうぐいす」の主題による変奏曲 ホ短調
ムソルグスキー:「展覧会の絵」
チャイコフスキー:「ロマンス」作品5/「瞑想曲」作品72-5
チェイコフスキー/プレトニョフ編曲:組曲「くるみ割り人形」より
プロコフィエフ:「ソナタ第7番」 変ロ長調 作品83


チラシから受けた繊細そうな印象と違って、意思の強さをまず感じる演奏だった。演目はバリエーションに富んでいて、いろいろな表現を楽しめた。アンコール(ラ・カンパネラ他2曲)も入れて2時間程だったが、濃い内容でした。

第5曲「殻を付けたままのひよこのバレエ」
 (ガルトマン画)

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前半のメイン「展覧会の絵」は、華々しいオーケストラ版(ラヴェル)もよいけれど、本来のピアノ版で聴くと民族調の音色のなかにも一種の清々しさが感じられる。
  
後半のメイン「ソナタ第7番」は独ソ戦のさなかに作曲された「戦争ソナタ」(6番~8番)のひとつ。解説には、「無調的な語法による極度に凝縮された構造性」に貫かれている云々と難しいことが書いてある。恐怖と苦難を表す冒頭から人民を鼓舞するような展開となる。重量感があるが、少々落ち着かない気分になった。ピアノソロ用に指揮者プレトニョフが編曲した「くるみ割り人形」のほうが聴いていて楽しいことは楽しい。

アンコールを3つひいてもまだまだ何時間でも弾けそうな感じでした。舞台までの距離が近いと、演奏家の息づかいが伝わるといいますか、一体感があります。
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by itsumohappy | 2009-06-24 23:57 | 音楽 | Trackback | Comments(2)
2008年 11月 13日

サンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団「チャイコフスキー・ガラ」

d0007923_0115367.jpgサンクト・フィルの「チャイコフスキー・フェスティヴァル テミルカーノフ70歳記念」公演のうち、11月10日の演奏の感想です。
(東京オペラシティコンサートホール)


ショスタコーヴィチ作品がメインだった前回来日公演(06年)には行かれなかったので、今回は早めにチケットを購入(といっても3階サイド最安席)。平日の夜公演は、会場に着くまでにばたばたし、何だか疲れる。テミルカーノフ氏体調不良で3日の昼公演が中止になったのを聞いて、10日は大丈夫かと心配だったが、無事開催されてよかった。
公演の感想を一言で言えば、重厚で華々しく、非常に聴きごたえがありました。



[出演]
デニス・マツーエフ(ピアノ)
庄司紗矢香(ヴァイオリン)
エカテリーナ・シチェルバチェンコ(ソプラノ)
アンドリュー・グッドウィン(テノール)


[曲目]
●「エフゲニー・オネーギン」よりポロネーズ
●ピアノ協奏曲第1番
●ゆううつなセレナード
●「スペードの女王」よりリーザのアリア「一体、何処から涙が」
●「エフゲニー・オネーギン」よりレンスキーのアリア「青春は遠く過ぎ去り」
●「イオランタ」よりイオランタのアリオーゾ「なぜなの?」
●「イオランタ」よりイオランタとヴァデモンの二重唱「ワインをどうぞ~あなたが黙っている理由がわからないわ」
●序曲「1812年」


席からは舞台上手半分強しか見えなかったが、テミルカーノフ氏の動きはよく見えた。優しい好々爺然としたマエストロが、すーっと台に上がるやいきなり演奏開始。指揮棒は使わない。腕を上下左右させるのはともかく、手についた水滴でもぱっぱと払うような、というか指で塩でも散らすような動きに、一体オーケストラがどう反応するか観るのが面白かった。

冒頭の「ポロネーズ」でさっそくひきこまれた。音のうねりを体で感じるのはやはり生演奏ならでは。この曲はわくわくと盛り上がるので好きです。テンポも好みだった。続いてピアノ協奏曲第一番。マツーエフは、チャイコフスキーコンクールの優勝者(98年)で豪快な演奏。金管楽器も迫力があり、素晴らしく印象的な出だしが映えた。ピアノの手元を見ていると、その動きに驚く。弾くというか全身でばんばん叩きまくる。でも別に乱暴には聞こえない。アンコールの「四季-10月 秋の歌」は、一転してしっとりと囁く演奏で、息をつめるように鑑賞した。

休憩後、真っ赤なドレスのほっそりした紗矢香ちゃん登場。ヴァイオリンの音がかなり大きく聞こえる。ホールの設計でしょうか。「ゆううつなセレナード」、哀感たっぷりで、ヴァイオリンがむせび鳴いていた。1715年製ストラディヴァリウス「ヨアヒム」だそうです。オーケストラとの調和もよかった。

d0007923_042769.jpg次にアリア。エカテリーナ・シチェルバチェンコ(右)は、05年にボリショイデビューした新星。たおやかな美しさがあった。来年6月、14年ぶりに来日するボリショイ・オペラ公演にも出演予定。オネーギンのタチアーナを演じる。アンドリュー・グッドウィンは、オーストラリア出身で、現在ボリショイのゲスト・ソロイスト。若いレンスキーにぴったり。二重唱はわりと長いもので、演奏とともにずいぶん堪能できた。

最後に「1812年」。団員がフル出演して奏でるとかなりの迫力。ラストは、金管部隊が立ち上がって演奏。そういう演出の曲なのだろうか。鐘は鳴り響き、偉大なるロシアモード全開で、少々苦しいくらい。ホール内はびりびりしていた。

はなをかみかみ指揮していたマエストロ、顔色もあまり良くなく、途中で倒れたりしたらと気がかりだったけれども、最後のアンコール「トレパック」までしっかり力が入っていた。
楽団員の雰囲気は実にいろいろで、上から(舞台半分だけだが)眺めていると面白い。枝木のような金髪高校生風がいれば、樽のようなロシアンマフィア風もいる。ムラヴィンスキー時代からやっています、という感じの人もいる。コンサートマスターとその隣席の奏者もかなり個性的。動きの面白い金管部隊が見える側でよかった。演奏中、舞台に何かを誤って落とす音がどこかでしたりして、鷹揚な感じである。

この日の公演は7分程度の入りで、どのランクの席も空きがあった。何だかもったいない。そうしたら5日の公演の入りは何と3分!位だったらしい。1公演キャンセルによる曲目全面変更のせいにしてもあまりにもがら空き。1日2公演などというプログラムを組まず、チケット単価を下げる努力をしてほしい。S席2万円は高い。

楽団は、引き続き、19日までアジアツアー。ソウル、台北、上海で公演する。

ユーリ・テミルカーノフ
d0007923_0392125.jpg北カフカスのカバルディノ・バルカル共和国の首都ナールチク生まれ。1988年に死去したムラヴィンスキーの後を継いでレニングラード・フィル(現サンクトペテルブルク・フィル)の首席指揮者となった。



(写真は楽団のサイトより)
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by itsumohappy | 2008-11-13 23:45 | 音楽 | Trackback | Comments(2)
2008年 01月 22日

正教会の聖歌

2005年9月にロシアへ旅行にいったおり、モスクワ郊外にあるトロイツェ・セルギエフ大修道院を見学した。同修道院は、ロシア正教の総本山であり、数多くの信者の団体があちこちの礼拝堂で一心に祈り、歌っている姿が印象的だった。
見学窓口でカメラ券を買ったらおまけにCD(下)をもらった。ここの大修道院で録音されたモスクワ調、キエフ調の聖歌や説教がおさめられている。柔らかく響く多重唱を聞いているといつも気が遠くなって昇天してしまいそうな感じになる。
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正教会では、楽器が一切使われない。言葉による礼拝が重視されてきた伝統による。祈祷書も歌うように読まれ、聖職者の条件のひとつは声がよいことであるといわれる。

正教会の聖歌は、ユダヤ教の伝統及び古代ギリシャ・ローマの文化の影響も受けて、地域ごとに発展したもので、統一されていない。キリスト教がローマ帝国の国教となった4世紀から10世紀頃まで聖歌が創作された。東ローマ帝国で発展したビザンツ聖歌は、信者が掛け合いのように合唱を繰り返すのが特徴で、そのスタイルが今日に伝えられた。正教がロシアに伝道されたのは10世紀頃である。スラブ語で祈祷文が歌われた。

日本に正教の聖歌が伝わったのはニコライ・カサートキンの伝道後。1871年頃には、函館で、日本人信者が聖歌を合唱していた。これが、日本における混声四部合唱が発祥したときとされる。

私の持っている正教の聖歌CDをもうひとつ。
d0007923_1214415.jpg「晩祷」
ワレーリー・ポリャンスキー指揮
ソヴィエト文化省室内合唱団
イリーナ・アルヒーポワ(メゾソプラノ)
ヴィクトル・ルミャンツェフ(テノール)
録音:1986年(メロディア) 
 

ラフマニノフの作品(1915年)で、全15曲。伝統的な聖歌を踏まえて作曲された。聖歌なので合唱のみ。声がまるでオーケストラのように多彩に響きわたる。
「晩祷」は、宗教が否定されていたソ連時代は上演の機会がなく、長い間日の目を見なかった。ラフマニノフは、1917年の10月革命後、亡命し、アメリカに移住した。

日本正教会のサイトによれば、正教会の礼拝(奉神礼)の中心となるのは、「聖体礼儀」で、主ハリストス(キリスト)の復活を記憶する毎日曜と正教会の祭日(降誕祭などの十二大祭や復活祭)に行われる。これは、カトリックのミサ、プロテスタントの聖餐式にほぼ相当する。聖体礼儀の準備のための祈りが「徹夜祷」である。ラフマニノフのこの作品は、「徹夜祷」のために作曲された。「晩祷」及び英語タイトルVespersは、「徹夜祷」を構成するひとつである「晩課」の意味なので、訳が不正確と言われる。

「晩祷」は和訳だとこんな内容です。(実際の「徹夜祷」には曲目が足りない)
1. 来たれわれらの王、神に  
2. わがたましいや主をほめあげよ
3. 悪人のはかりごとに行かざる人はさいわいなり
4. 聖にして福たる常生(じょうせい)なる天の父
5. 主宰や今 なんじのことばにしたがい
6. 生神童貞女(しょうしんどうていじょ;マリアのこと)や喜べよ
7. いと高きには光栄
8. 主の名をほめあげよ
9. 主よなんじは崇めほめらる
10. ハリストスの復活を見て
11. わが心は主を崇め
12. いと高きには光栄 神に帰し
13. 今 救いは世界に
14. なんじは墓より復活し
15. 生神童貞女讃歌

【参考】「時課」の祈り(日本正教会のサイトより)
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正教会では「創世記」に従い、夕方から一日が始まる。一日をテーマに沿って8つの時間に分けて祈るのが原則である。しかし、現代では一部省略し、「徹夜祷」として、「晩課」「早課」「一時課」をまとめて行い、翌朝の「三時課」「六時課」に続いて「聖体礼儀」を行う。


(1993年10月13日北海道新聞、「東方正教会の聖歌と奉神礼」のサイト、日本正教会のサイトより)
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by itsumohappy | 2008-01-22 01:38 | 音楽 | Trackback | Comments(2)
2007年 11月 04日

日露友好 ショスタコーヴィチ交響曲全曲演奏プロジェクト

ショスタコーヴィチの15の交響曲全てを井上道義氏が指揮する公演が開催中。(於:日比谷公会堂(東京)12月9日まで)
4日の公演(5番と6番:サンクトペテルブルクアカデミック交響楽団)の感想です。

d0007923_2336496.jpgショスタコーヴィチ。作品が多くて何を聴いたらよいかよくわからない。TVでやっていたバレエ音楽「ボルト」もよくわからなかった。私の場合聴いたことがあるものの方がずっと少ないが、ショスタコーヴィチは聴いて癒されるとかそういうイメージは持っていない。すごく疲れるとか暗いとかそういうイメージだ。

井上氏は、知識のある人もない人も先入観なしに気軽にもっとショスタコーヴィチに接してほしいという願いをお持ちで、このプロジェクトは料金3千円、採算度外視での取り組みである。演奏会場として氏が選んだ日比谷公会堂という場所もすごい。「東京市」がそこにだけ残っているような今時ない建物である。かつて浅沼稲次郎が倒れた舞台。ショスタコーヴィチの7つの交響曲がここで初演されたそうだ。

で、5番と6番。5番は、「絶対に革命と呼ぶな。」と井上氏がコメントしている。スターリンの大テロル時代のさなか、「ムツェンスク郡のマクベス夫人」、「明るい小川」で批判を受けたショスタコーヴィチが生死をかけて作ったのが5番という。
時代背景から言って「体制礼賛」と聴くものなのだろう。音は多彩というか派手というか洪水というか。壮大なやけを起こしているように感じるところもある。さぁこれでドーダ!(スターリンさまよ!)みたいな。えー、すごく疲れました。やはり生演奏の迫力は違います。私がいた前から15列目は少し近くて、音がストレートにがんがんきた。1番前だと死ぬでしょう。2階の方がよいと思う。
6番は5番に比べればぐっと大人しく、聴きやすかった。最初の方はゆったりと構えていて気が遠くなったが、そのうち、革命の歓びは忘れていないぞとばかりのにぎやかさもしっかりあった。

ロシアの楽団にはなんだかいろいろあるようだが、サンクトペテルブルクアカデミック交響楽団はダイナミックな演奏でよかったです。

**************
日比谷公会堂
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日本で最初の公会堂建築で、東京で唯一の音楽ホールだった。最近は専ら講演会が主な用途となっている。安田財閥創始者安田善次郎の寄付により、1929年建設された。設計は佐藤功一。
古い施設なので、ちょっと動くと椅子はきぃきぃ鳴き、座席幅も狭いです。
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by itsumohappy | 2007-11-04 23:46 | 音楽 | Trackback(1) | Comments(2)
2007年 09月 14日

ウクライナ国立歌劇場 「エフゲニー・オネーギン」

タラス・シェフチェンコ記念ウクライナ国立歌劇場オペラ(キエフ・オペラ)「エフゲニー・オネーギン」の感想です。(9月11日 新国立オペラ劇場)

d0007923_2344228.jpg約130年の歴史を持つウクライナ歌劇場(右下)は、ソ連時代、ボリショイ、キーロフとともに3大歌劇場のひとつに数えられたそうだ。(タラス・シェフチェンコは、19世紀のウクライナの詩人、画家)

オペラは、大昔、旅行先で見たことがあるだけで、国内で見るのははじめて。年中いろんな劇場のオペラが来日公演しているが、自分にはどうも高尚で、値段の分だけ楽しめないと思い行ったことがなかった。今回は、プーシキンの韻文小説(物語詩みたいな感じ)「エフゲニー・オネーギン」が好きなので出かけてみた。


ウクライナ歌劇場は、それなりの歴史・実力を持つとはいえ、一般に名の知れた歌手が出演しないせいか来日オペラの公演としては値段的に安いほうだろう。それでもC席11,000円。4階2列目中央。中央は全体が見渡せ、首や体が痛くならなくてよいが、やっぱり舞台から遠い。箱の中で人が動いている感じ。
d0007923_23423722.jpg平日6時開演はかなりきついので、行かれない場合も考えてそんなに高い席は買えない。劇場にどたばたかけこんで疲れてしまい、寝てしまうかも?と思ったが、全くそんなことはなく、じっくり鑑賞した。

タイトルはオネーギンでも、このオペラではオネーギンの存在はまぁどうでもよくて、聴きどころは「手紙の場」のタチヤーナのアリアと決闘前のレンスキーのアリア。
オネーギンの歌手は遠目にはちょっとへんなおじさんで、もうひとつらしくなかったが、それ以外の主要出演者は、イメージどおり。レンスキーがドラマチックで盛り上げた。オネーギンより若いレンスキー(確か原作では18,9才の設定)がテノール。タチヤーナの歌手も熱く、そして毅然と演じていてとてもよかった。
チャイコフスキーは「手紙の場」から作曲したそうだ。タチヤーナに強い思いが込められたオペラなのだろう。

舞台装置はどちらかと言えば簡素。色彩も白系でまとめていて品があった。3幕はじめの舞踏会のシーンでもかなり落ち着いた印象。ご当地のお家芸だからなのか、この作品だからなのかはわからないが、オネーギンは観ていて疲れないさっぱりしたオペラだ。

オーケストラを、タチヤーナの半分くらいしかないような小柄な女性が指揮していた。端正な演奏で、4階まで柔らかく響いていた。


************
せっかく行くからには、と予習のためCD、それもロシアの楽団のものを買おうと思っても適当なのを見つけられなかったが、ちょうどオークションにボリショイのがあったので600円で購入。聴くだけではアリア以外のところのシーンが何だかよくわからないのだが、それでも予習しておいてよかった。

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「エフゲニー・オネーギン」
○ハイキン指揮/ボリショイ歌劇場管弦楽団・合唱団
○ヴィシネフスカヤ(タチヤーナ)、ベロフ(オネーギン)、レメシェフ(レンスキー)
○メロディア (1955年モノラル録音のステレオ化CD) 
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by itsumohappy | 2007-09-14 23:56 | 音楽 | Trackback | Comments(4)
2007年 07月 04日

チャイコフスキー国際コンクールで日本人大活躍

2007年のチャイコフスキー国際コンクール(メインスポンサーはトヨタ)で、日本人が2部門で優勝した。めでたいですね。
今年は、ピアノ、バイオリン、チェロ、声楽部門でのコンクール参加者202名のうち、4分の3は旧ソ連構成国と日中など極東の出身者が占めたそうだ。

チャイコフスキーとモスクワ音楽院
d0007923_22333374.jpgバイオリン部門で優勝した神尾真由子さんは、現地で絶賛を浴び、金メダルはとるべくしてとったとのこと。音楽家の家ではないらしいが、生まれながらの天才(もちろん努力もしているんでしょうが)なのですね・・・。

神尾さんの使用バイオリンは、1727年に製作された名器ストラディヴァリウス。時間が経つごとに音がどんどん良くなる完ぺきな楽器という。

現代の名器を選ぶべくチャイコフスキーコンクールには、1990年よりバイオリン属製作部門もある。バイオリン、ビオラ、チェロとそれらの弓の製作で6部門。バイオリンとビオラの金メダルの賞金2万ドルは演奏部門の賞金と同額である。

今コンクールのバイオリン製作部門では、菊田浩さんが優勝した。さらに、2位に高橋明さん、4位に天野年員さん、6位&最優秀音響賞に岩井孝夫さんという受賞ラッシュだった。皆さんイタリアのクレモナで製作を学ばれている。もっともっとニュースになってもいいくらいの快挙である。

製作部門コンクールは、演奏部門に先立って6月1~13日に行われた。楽器の審査に当たっては、製作者の名前は伏せられ、審査員から楽器が見えないようにカーテンの後ろで演奏される。3位までの受賞作品は、コンクール事務局に納めることとなっており、グリンカ音楽博物館などに収蔵される。
せっかくの作品、コンクールの後に音色を聴く機会はなさそうですね。
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      コンクール会場のひとつ、モスクワ音楽院大ホール

(2007年6月13日毎日新聞、30日朝日新聞、チャイコフスキー国際コンクールのサイトより)
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by itsumohappy | 2007-07-04 01:20 | 音楽 | Trackback | Comments(3)
2006年 09月 30日

ショスタコーヴィチ生誕100周年

2006年9月25日はショスタコーヴィチ(1906-1975)生誕100周年にあたる。モーツァルト生誕250周年ほど話題になっていないようだが、記念のコンサートなどがあちこちで行われている。9月23日、N響定期公演(アシュケナージ指揮「ヴァイオリン協奏曲第一番イ短調」と「交響曲第10番ホ短調」)に行った。

d0007923_21108.jpgショスタコーヴィチは、なんか暗そう難しそうというイメージばかりが先行する。肖像写真は、どれもビン底眼鏡&眉間に縦じわで、苦悩を絵に描いたよう。実際、プロフィールなどには体制に痛めつけられた苦難の人生が書かれている。

コンサートで、先に演奏されたヴァイオリン協奏曲で疲れた?せいか「交響曲第10番」は途中で寝てしまってあまり印象に残らなかったので、「ヴァイオリン協奏曲第一番」(演奏:ボリス・ベルキン)について。

解説には、この曲は、DSCH形(「レ・ミ♭・ド・シ」の音型。「ドミトリー・ショスタコーヴィチ」のドイツ語表記より)を最初に使用したものとか難しいことがいろいろ書いてあるが、(音楽評論ってようわからん)シンプルに感想を述べれば、これは「恐怖感」そのものではないかと。

作曲家は、19歳で実質デビュー、その後ショパンコンクールでも入賞した。しかし、36年頃から始まったスターリンによる大粛清(大テロル)のなかで、オペラ「ムツェンスク郡のマクベス夫人」(不倫と殺人の話らしい)が批判された。翌37年革命20周年記念で発表した「交響曲5番」により復権。(生き延びた。)大戦中も国家賞を何度も受ける活躍をするが、48年、スターリンの側近ジダーノフによる文化統制で、プロコフィエフ、ハチャトゥリャンとともに「形式主義的」と批判された。「ヴァイオリン協奏曲第一番」はこの頃作られたとのこと。

4楽章から成るこの曲、
 第1楽章:逮捕、そして処刑の悪夢にうなされる芸術家のうめき声
 2:不安の増幅と焦燥感。ああ、思うように(体制に受けるように)書けない。
  今度こそ殺されるかも感。
 3:現状を冷静に受け止め、心を落ち着かせようと懸命の努力。
 4:気分を盛り立て創作に立ち戻ろうとする強い意思。
…というイメージを私は抱いた。

ジダーノフ批判後は、レニングラード音楽院を解雇され、作品は上演されなくなった。スターリン礼賛的とされる楽曲などを作り再び汚名を挽回。
48年に書き終えた「ヴァイオリン協奏曲第一番」が初演されたのはスターリンの死(53年)後の55年だった。
その後もショスタコーヴィチは、党からの圧力と無縁ではなかったが、亡命することなくソヴィエト社会を生き抜いた。専門家によると、『ショスタコーヴィチの証言』(ボルコフ著・80年)で、ショスタコーヴィチが共産党を嫌悪し、反体制的メッセージを作品に込めていたことが明らかになってからは、「体制に迎合した芸術家」というかつての評価は「反体制に殉じた芸術家」に変わったそうである。

************
11月、ショスタコーヴィチ生誕地からショスタコーヴィチの盟友ムラヴィンスキーがかつて率いたサンクトペテルブルク・フィルハーモニーが来日する。ショスタコーヴィチをメインに、チャイコフスキー作品も演奏予定。
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by itsumohappy | 2006-09-30 21:08 | 音楽 | Trackback | Comments(0)
2006年 02月 28日

ロシア民謡コンサート2006

d0007923_23314971.jpgコンサートでくれるちらしの束の中にあった案内で「魂と大地の歌 ロシア民謡コンサート」を知り、池袋の東京芸術劇場へ行った。(2月5日) あの広い会場が満員状態でちょっとびっくり。なんでも日本フィルのオリジナルプログラムで人気の企画なのだそうだ。お客さんの平均年齢はかなり高めで老夫婦連れが多く目に付いた。その昔、うたごえ喫茶に通っていた方々なのかもしれない。

ロシア民謡の特徴はバスと合唱。コンサートは、解説も交えながらバス、ソプラノ、合唱と組み合わせたなかなか楽しい構成であった。
生の音は心に非常に響く。「道」を聞きながら泣く。ロシア民謡の哀しさはどこから来るものなのだろう。大地と厳しい自然、戦争の歴史だろうか。ロシア正教の伝統(伴奏なしで合唱する)も大きく影響しているようだ。

バスの岸本力さんは、芸大ではじめはドイツ歌曲をやっていたが、どうにも合わなくて病気になり休学したそうだ。田舎に帰って畑を耕しているうちロシア歌曲に導かれた、と語っていた。白樺合唱団というのは知らなかったのだが、50年以上の歴史があるとか。男女ともロシアの民族衣装の大部隊でなかなか壮観だった。

うたごえ喫茶でどうしてロシア民謡がよく歌われたのかよくわからないが、時代の空気に合っていたのだろう。うたごえ喫茶ともしびの人気リクエストにも「鶴」、「アムール川の波」、「バイカル湖のほとり」などしっかり入っている。HPによると新宿にはここの他にも2軒うたごえ喫茶があるようでちょっとびっくり。

d0007923_23321247.jpg哀感に満ちたメロディーが今の気持ちに合っていたので、ロシア国立室内合唱団、アレクサンドロフ室内合唱団が歌っているロシア民謡CD2枚組を買ってしまった。夜しんみり聞いていると確かに荘重な感じもあり教会の音楽に通じると思った。




コンサートのプログラムは下記のとおり。

<指揮>渡邊一正
<歌と解説>岸本力(バス)
<歌と司会>赤星啓子(ソプラノ)
<合唱>合唱団白樺

アンドレーエフ:ロシア民謡「月は輝く」による変奏曲(オーケストラ演奏)/
ステンカ・ラージン(バス)/トロイカ(バス)/コサックの子守歌(ソプラノ)/
一週間(ソプラノ&バス)/リャードフ:「8つのロシア民謡」より“村祭りの踊り”
“村人の踊り”(オーケストラ演奏)/赤いサラファン(ソプラノ)/悲しき天使(バス)/
黒い瞳(バス)/疲れた太陽(バス)/鶴(バス)/道(バス&合唱)/
〔ロシア語でみんなで歌おう:ともしび〕/百万本のバラ(合唱)/
ウラルのぐみの木(ソプラノ)/アムール川の波(合唱)/
なぜ私はあなたを知ったのでしょう(ソプラノ)/
果てしなき荒れ野原(バス)/ヴォルガの舟曳歌(バス&合唱)
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by itsumohappy | 2006-02-28 22:42 | 音楽 | Trackback | Comments(0)
2006年 01月 11日

ロシア文化フェスティバル開幕コンサート~ ゲルギエフ&マリインスキー歌劇場管弦楽団

1月10日、上記フェスティバルオープニング記念のコンサートが東京オペラシティであった。何故かあまり宣伝で見かけないが、今年は日ソ共同宣言による日ロ国交回復50周年ということで、1年間ロシア文化のフェスティバルが開催され、各月、コンサートや演劇などが予定されている。
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10日の演目は
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番第1楽章(ピアノ:上原彩子)
プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第1番(ヴァイオリン:諏訪内晶子)
ラフマニノフ:交響曲第2番
であった。華やかなピアノでスタートして、バイオリンの技にひたった後にメイン、である。最後のラフマニノフは、音の多彩なうねりを体で感じるというか広大なロシアの大地(見たことないけど)のイメージだ。光や風といった空気、日本の繊細なそれとは別物の空気があった。

詰襟のような上着姿のゲルギエフ氏は、アバンギャルドなカリスマ神父さんのよう。時に飛び跳ねたりして動きの大きい指揮をしていた。
上原、諏訪内両氏はともにチャイコフスキーコンクール優勝者。演奏も短かった上原さんの表情はちょっと伺えなかったが、諏訪内さんはかなり厳しい、緊張したような面持ちだった。

演奏の前に、プーチン大統領のメッセージを携え来日したナルイシキン官房長官と森前総理が挨拶をした。2階正面席には高円宮妃殿下、ロシュコフ駐日大使ほかおつきの方々が並んでおり、開幕らしい雰囲気。ただ森氏の挨拶中、野次?みたいな大声が飛び一瞬不穏な感じに。しかし、その後何事もなく幸いだった。

プログラムによるとマリインスキー、旧キーロフ劇場は18世紀の創設。19世紀~20世紀のオペラ、バレエの名作の数々を生んだ。ただいま札幌から鹿児島まで日本公演を行っている最中である。その間オペラ「ニーベルングの指輪」4部作の全上演がある。チラシを見るとセットも値段もすごい。こういう高尚なものを楽しめる身分になりたいなぁ。

この日のコンサートホールは巨大すぎずちょうどいい広さ。ただ初台という場所が行きにくく、新宿からひと駅と言っても会場までたどりつくまでけっこうある。建物も入り組んでいてわかりにくい。7時開演というのもけっこうぎりぎりできつい。コンサート楽しむのも一苦労である。
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by itsumohappy | 2006-01-11 01:35 | 音楽 | Trackback | Comments(2)