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2008年 09月 07日

N・ドゥンバゼ 『僕とおばあさんとイリコとイラリオン』


d0007923_23374311.jpg著者ノダル・ドゥンバゼ(1928-1984)は、現代グルジアの代表的な作家の一人だそうで、グルジア作家同盟書記長(1972-84)を務め、1980年にレーニン賞を受賞した。本作は、1960年発表後すぐにロシア語へ翻訳され評判となった。
日本ではじめてグルジア語から直接翻訳された小説である。訳者は、東京外国語大学の研究員児島康宏氏。

内容は、僕こと主人公ズラブとズラブをめぐる人々(同居のおばあさん、親戚のイリコとイラリオンの両おじさん)の日常を描いたもの。黒海に面したグリア地方が舞台で、時代は1940年代半ばから50年代である。主人公は、学校では鳴かず飛ばず、いい年したおじさんのイリコとイラリオンのいたずら(というには度が過ぎている)合戦に常に巻き込まれる日々を送る。人々の言動にはユーモアが溢れ、素朴でのんきである。

コルホーズの総会シーンがあまりにばかばかしくて笑わせるので、これは、もしかしたらのんきを装った体制批判小説なのか?と思いきやそうではなく、ただ淡々と主人公の成長に沿って、その楽しい、或いはほろ苦い想い出が綴られている。

訳者の解説によれば、本書は、著者の少年・青年時代の体験に基づくとのこと。著者は、9歳の時両親(無実であるのに反社会活動の罪で逮捕された。のち、父親は銃殺されていたことが判明)と別れ、田舎の祖母宅に身を寄せた。戦時中でもあり苦しい労働の日々を送った。

「私は自由が欲しかった。そのために笑いを選んだんだ」と著者はかつて語ったそうだ。
小説には父母への言及が一切なく、不自然に思ったが、当時のソ連の読者には説明がなくとも「大粛清による孤児」という状況がすぐに理解できたらしい。
この本は、著者の理想の楽しい暮らしを思い描いたお話だったのだ。

d0007923_23391884.jpg グルジアの文字はくるんとしていて可愛らしい。
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by itsumohappy | 2008-09-07 23:46 | 文学・本 | Trackback | Comments(2)
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Commented by えいはち at 2008-09-08 10:27 x
文字もくるんとしていて可愛らしいですが、「ポチ」とか「ゴリ」とか、なんか楽しい響きの地名を、今回の紛争のニュースで知ったのは悲しいことでした。グルジアに平和を…。
Commented by itsumohappy at 2008-09-09 00:24
えいはちさん
ポチ、は私も気に入っています。可愛いなぁ。ポチ。はしけを使わないと米艦船から物資運べないそうですね。ゴリはスターリンさまの故郷ですね。こんなに毎日グルジア報道が途切れないこともめったにないでしょうねぇ。


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