「青春のロシア・アヴァンギャルド シャガールからマレーヴィチまで」(Bunkamuraザ・ミュージアム(渋谷・8月17日まで))の感想です。
日本初公開である、モスクワ市近代美術館所蔵の30作家・70作品の展示会。1999年に開館した同美術館のコレクションは、館の総裁で、ロシア美術アカデミーの総裁も務める彫刻家ツェレテリ氏が、海外から買い戻した収集品が主体となっている。 20世紀初頭、ロシア民衆芸術は、フォービズム、キュビズムに影響を受け、「ネオ・プリミティズム」が生まれた。農民などがモチーフの素朴な平面表現+抽象表現は、やがて「立体未来派」の作品に見受けられた。さらに、幾何学的抽象を追求するマレーヴィチが、「スプレマティズム」を発表した。展示会はこの流れに沿って構成されている。 紹介されていた主な作家は、シャガール、ラリオーノフ、ゴンチャーロワ、ブルリューク、アニスフェリド、マレーヴィチ、プーニら。 はじめのほうはピカソ、セザンヌ、ゴーギャンの影響を受けたと思われる絵画が多い。ロシア・アヴァンギャルドの中心人物、マレーヴィチの創る人物は面白い。再現性を否定し、理論・理念に基づく絵画である。 グルジアの放浪画家、ピロスマニの絵が多く展示されていた。20世紀プリミティブ芸術家の一人だそうだ。鑑賞するのははじめて。遠近のない、素朴でへたうま風の作品は、何となくルソーの絵のようだった。 解説によると、ロシア・アヴァンギャルド芸術は絵画のみならず、詩、演劇、映画、デザイン等幅広いジャンルで、時には連携しながら進められた革新運動だった。しかしながら1920年代以降、抽象絵画は「個人的」と批判された。1932年、スターリンは、全ての芸術団体の解散を命じ、「社会主義リアリズム」が唯一認められた「芸術」となった。 展示会の謳い文句、「青春の・・・」は、実際は「悲劇の・・・」のほうが似つかわしいような。 ロシア・アバンギャルドの画家の多くは亡命している。マレーヴィチは、普通の具象絵画に回帰(回帰するしかなかった)。最後のコーナーにあった自画像が「終焉」を物語っていた。 余り見たことのないロシア・アバンギャルドの作品。ロシアものはだいたい見学者が少なく、初日なのにじっくり観ることができた。次はどこかで、文学・演劇等も交えた総合的な紹介展示をしてくれないかしら。 展示会は、東京のあと大阪、岐阜、埼玉を巡回。Bunkamuraでは、次はミレイ、ワイエス展と続いた後、来年の4月、国立トレチャコフ美術館展を開催。「見知らぬ女」来日予定です! ********************* モスクワ市近代美術館 1959年に米国から帰国したフルシチョフは、現代美術館の建設を命じた。デミチェフ文化大臣に呼び出されたツェレテリ氏(当時ソヴィエト科学アカデミー歴史・民俗学研究所に所属)は、「現代美術にはシャガールやブルリュークなど国を去った芸術家達が必要である」と応え、計画は頓挫した。1997年、ツェレテリ氏がロシア美術アカデミー総裁に就任後、美術館建設構想が本格的に始動した。 (美術館のサイトより)
by itsumohappy
| 2008-06-22 17:02
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