2007年 06月 26日

シャラーモフ 『極北 コルィマ物語』

d0007923_23284370.jpg
ヴァルラーム・シャラーモフ(1907~1982)は、強制収容所での体験を基に短編群『コルィマ物語』著したソ連の反体制作家・詩人。今年6月で生誕100周年である。ソルジェニーツィンと違って生涯ソ連国内で創作を続けた。

本書のあとがきによると、『コルィマ物語』は、1953~73年にわたって書き続けられた約150篇の短編の総称で、作家の生前は国内で出版されなかった。しかしながら地下出版で回し読みされ、国外にも流出し高い評価を得たという。ペレストロイカの時代になってから本格的にソ連国内で紹介された。


d0007923_22293658.jpg
マガダンの北がコルィマの地。『極北 コルィマ物語』の図版に、周辺にあった収容所のおおまかな位置(『収容所群島』図版より)をで示した。

作家は、4度逮捕され、約20年間強制労働に従事した。逮捕の理由は、反革命行為でいわゆる国家反逆罪である。最初の逮捕は1929年。「レーニンの遺言」(スターリンは粗暴であり、書記長職から降ろすべきというレーニンの文書。スターリンの死後公表された。)を印刷しようとした地下出版所で捕らえられた。スターリン時代は逮捕歴があるため「人民の敵」扱いで逮捕。
北極圏のコルィマの収容所で15年過ごした。コルィマは、オーロラ、永久凍土、夏は沈まぬ太陽の地である。厳寒期は、-50~60度位になるらしい。ここには金鉱があり、砂金の層を掘り起こし金を産出するまでに多大な労力が必要とされた。作家は、肉体労働に従事したのち補助医師となり、刑期を全うして生還した。

『極北 コルィマ物語』は、『コルィマ物語』と総称される短編シリーズのうち約5分の1を収録。まだ全訳は出ていないようである。生地獄の人間模様をあれこれ描いているのだが、おどろおどろしくなくむしろ静謐な印象を受ける。それにしてもこれほど悲しい物語群はおそらくないと思う。

作家は、刑期が終わってもすぐにはコルィマから出ることを許されなかったようだ。「手紙」(1966)という短編に、コルィマから犬ぞり、トラックを乗り継いで500キロ先まで行って敬愛するパステルナークの手紙を受け取る印象的なエピソードがある。

今、ロシアでは政府系のTV(テレカナル・ロシア)で、『コルィマ物語』を下敷きにした全12回のドラマシリーズ「レーニンの遺言」(Завещание Ленина)が放映されている。
d0007923_23311719.jpg
          TVドラマ「レーニンの遺言」より(テレカナル・ロシアのサイトより 
[PR]

by itsumohappy | 2007-06-26 00:00 | 文学・本 | Trackback | Comments(8)
トラックバックURL : http://amihappy.exblog.jp/tb/5685575
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
Commented by おロシア人 at 2007-06-26 19:31 x
大変興味そそられる本ですね。読んでみます。
Commented by itsumohappy at 2007-06-26 23:46
書き忘れましたが、朝日新聞社の本です。
どうしてこんなに異常に人民を痛めつけられたのだろう?と思います。。楽しい本ではないですが、文は読みやすいです。
Commented by azu-sh at 2007-06-27 18:51
コルィマってどう発音したらよいのか…本もそうですがレーニンの遺言というドラマ、気になります。どんなドラマなんでしょう。
Commented by itsumohappy at 2007-06-28 00:15
こんばんはー Колыма(Kolyma)・・・こりま、に近いんですかねぇ
ドラマは、シャラーモフさんを主人公に、その生涯と著作両方をベースにしているとのことです。なんか、ここ↓に各回のあらすじぽいのが出てます。
http://www.rutv.ru/tvp_issue.html?d=0&tvpreg_id=112763&cid=42
Commented by えいはち at 2007-06-28 09:37 x
こんにちは。当然といえば当然ですが、ソルジェニーツィン以外にも出てきますね、こういう作品。ソルジェニーツィンが国家褒章っていうのも、驚きですが。
話変わりますが、今朝の新聞に、日本の新幹線技術を導入してシベリア鉄道を近代化、なんて記事が出ていました。僕は十数年前にモスクワからイルクーツクまで4日間乗ってましたが、スピードアップしちゃうとロマンなくなりますね。通りすがりの旅人のわがままかもしれませんが。
Commented by itsumohappy at 2007-06-29 23:11
こんばんはー この作家は、ソ氏とはあまりよい関係ではなかったようです。ソ氏が共著(収容所群島)をもちかけたそうですが、断ったとか。
ウラジオあたりからシベリア鉄道乗ってみたいです。。
なぜか前総理秘書官が、トンネル掘って、稚内から樺太抜けてシベリア鉄道に入るという構想をぶちあげたようですが。。
Commented by KIMPITT at 2010-01-13 20:08 x

最近、辺見庸さんが、エッセイのなかで、この本を紹介していて、
検索の結果、ここへたどりつきました。
この本は、もう絶版?で、ネットの古本屋で検索しても、
みつかりません。
シャラーモフで、ヤフオクのアラートに登録し、
気長に待っているところです。
このブログ、静謐な品のよさが素敵です。
Commented by itsumohappy at 2010-01-14 23:27
KIMPITTさん
ご訪問ありがとうございます。風前の灯ブログですが、
ご覧&おほめ頂きうれしく思います。
そうですか、もう市場に出ていませんか・・最近は
本が消えるスピードがはやいですね。まして、
あまりこういう売れなさそうな本は・・。

うちのほう(横浜市)では、市の図書館2館で
所蔵されていました。


<< チャイコフスキー国際コンクール...      最近の話題から >>