2007年 06月 01日

国後島・択捉島上陸記 -3. 国後の光景と択捉への決死行

前夜に団員が訪問したあちこちの家庭の様子&頂いたお土産について語り合った。付近へのドライブに連れて行かれたり、ひたすら飲みまくったりいろいろだったようだ。言葉が通じない者同士は、飲食以外には「何かを見て時間をつぶす」パターンがお互いに楽かもねー、と結論。

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朝、起きたら窓の外に牛がのんびり。誰が飼っているのかよくわからない牛が町のあちこちをうろついている。野良牛化しているのも多い。

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朝食は町のレストランで摂った。ブリヌイだけでもお腹いっぱいになる。おいしかったのでいくつも食べた。

古釜布の町から車で約1時間、羅臼山を回りこむように道路を南下し、メンデレーエフ空港に向かった。途中の道には、簡単な舗装らしきところがあったが、ごく一部のみ。

風景は、頼りなげな白樺の林、低い松の茂みが続き、道路を見なければ軽井沢みたいな日本の寒冷地の景色とよく似ている。それでも夏来ると案外暑いらしい。
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メンデレーエフ空港ビル(に相当する建物)

到着した我々を見て、ここで飼われている犬が大喜びで走り回った。空港周辺には何もなく、冷たい風が吹き抜け、ウグイスが鳴いていた。
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ユジノサハリンスク(サハリン)から40人乗位の飛行機が通年週4便飛ぶ。常に満席らしい。
サハリンまで1時間40分くらい。距離のわりに時間がかかるのは、飛行機のせいか?(アントノフ24というプロペラ機) 霧が多い夏場より寒い時期の方が欠航が少ない。この空港の自慢は、根室の中標津空港より滑走路が50メートル長いこと。その滑走路というのがこれ↑。

何という工法なのか、鉄板?がつないである平らじゃない地面。これでも路盤が交換されたあとである。悪路のため、06年10月から12月末まで閉鎖されていたのだ。クリル発展計画の一環として滑走路延長工事の予定もある。

滑走路脇移動路の地面はこれ↓  古くなると民家の塀などに再利用される。
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写真や話などに夢中になっている我々にかまってもらえず、入口でしょんぼりしていた犬にカメラを向けたら喜んで寄ってきた。犬も人懐こい。


何でメンデレーエフ空港と言うのか尋ねるのを忘れた。水兵リーベの学者メンデレーエフ或いはその息子のメンデレーエフ(報道写真家。ニコライ皇太子の世界旅行に随伴し、1891年来日。大津での写真も撮っている。)にちなんだものか。

d0007923_1735239.jpgここの道路脇にも“курильский”看板が。

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東沸にある日本人墓地へ向かった。墓地はこの池に沿って奥(写真の手前)に入ったところにある。

d0007923_17371535.jpg東沸の日本人墓地

ここもしんと静か。道からかなり奥に入った山の斜面にひっそりと墓石が集められている。
お墓前に植えてある水仙が小さいながらも花を付けていた。

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墓地の辺りの山にたくさん咲いていたエゾエンゴサク。
元島民の方が教えて下さった。蜜が甘いそうだ。根は漢方薬にもなる。花の色は青系のバリエーションでいろいろ。
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ギョウジャニンニク。
これも道の方に教わった。葉っぱをおひたしなどにする。昔はアイヌねぎと呼んだが、今はそういう言い方はあまりしないらしい。道民の皆さんは口々に、こんな立派なのは手に入らない!とやや熱くなっていた。ロシアでもきざんでピロシキの具にしたりするそうだ。

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山すその一番奥にある墓石に道民の方がギョウジャニンニクをそなえた。

東沸あたりまで来ると携帯電話の電波が届く。ただ電波を発する装置は島に基本的に持ち込めないことになっているので、おおっぴらには使えない。
雪をいだいた美しい知床の山なみを眺めながら古釜布に戻った。北海道から国後の羅臼山が見えるように、こちらからも北海道がよく見えるのだ。
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国後の風景はなだらか。まだ春先の気候で、緑が少なく殺風景に見えたせいもあるが。元島民の方々に尋ねると、川がなくなるなど地形が様変わりしていて昔の面影はないという。これまでの地震、津波で海岸付近もさらわれているらしく、昔住んでいたあたりも全然わからないと語っていた。

ウサギとか何か動物がいないか景色を見ていたが、何も目にとまらなかった。あとで専門家に聞くと、北方領土には鹿はいないとのこと。根室にはあんなにいたのに。熊は多く、山を登った跡があったそうだ。
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古釜布の音楽学校

町の子供たちが通う学校。お稽古ごとの学校とのことで、ヤマハのようなものか。小中学生位の男女が、入れ替わり立ち代わり歌や踊りを披露してくれた。これがきちんとした指導を受け、練習を重ねていると思われるものだった。
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d0007923_17413316.jpgバヤン(アコーディオンみたいの)、バラライカなどの合奏やローシカ(木さじ)を使った出し物も上手で、そのロシアらしさにまた何だか複雑な気分になった。
けーむりたなびくとまやーこそ~と「われは海の子」を披露してくれた(左)。この子達に限らず、ロシア人の発音する日本語はかなり自然に聞こえる。わーがなつかーしきすみかなれ~。なかなか意味深長な選曲であった。

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古釜布の商店街付近と店内
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商品はサハリンから運ばれるらしい。私は食料品しか見なかったのだが、衣料品などは中国製が多かったそうだ。島に来てとりあえず目にとまる日本のものと言ったら中古車くらいだ。食料品の値段は日本のに近い(安くない)。書店はないらしい。カウンター脇に雑誌が数冊のっている程度。
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簡素ながらも美しい教会

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友好の家で夕食後ほどなくして、択捉に向かうため、はしけに乗船。岸壁には、団員が昨晩お世話になった家の方々が見送りに来ていた。
女の子たちがカチューシャを歌ってくれた。我々を見物していた女の子2人組に飴をあげたらぱっと顔を輝かせてかわるがわる抱きついてきた。
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おりしも低気圧がやってきていて海は荒れ模様。はしけに乗ったはいいが、波に揺られてなかなか停泊中のロサ・ルゴサ号に平行してつけることができない。ロープがうまくかけられず、はしけが斜めになって先がどーん!とかなりな衝撃でロサ号にぶつかる。去年は、はしけに当てられてロサ号の窓が割れてしまったそうだ。

ロサ号へ渡る板がシーソーのように動いて、かなり危なかった。波の様子を見ながら、今だ、それ行け!とばかり少しずつ乗り移った。
結局、船は低気圧と一緒に北上。進むほどにアップダウンが激しくなった。翌日の択捉上陸に向け荷物の整理をしていたのだが、夕食を食べ過ぎたこともあって、だんだん気分が悪くなってきた。頭も働かず、荷物を部屋にめいっぱい広げたままで整理を中断。
そのうち坐ってもいられなくなり、間断なくぐわわぁぁんと来る波に呼吸を合わせるようにしながらベッドにじっと横たわるしかなかった。

北方領土の周辺海域は、海流の渦場であり、国後水道(エカテリーナ海峡)は暖流・寒流がぶつかり合う難所だそうだ。そこを通ると船が回るような感じですぐわかるよって事前に聞かされ、ちょっとわくわくしていたのだが、いつ通過したのか全然わからなかった。一晩中、最初から最後までがんがん揺れていたから。

あとで聞けば、海上風速25mに達したとのこと。これってもし陸上であれば、屋根瓦が飛び、木が折れ、煙突が倒れる位の暴風らしい。
そんなこんなで、予定より3時間半遅れ、約16時間かかって択捉島の内岡(なよか/キトーブイ)沖にたどりついた。ほとんどの人が朝食をとる元気もなく、よれよれ状態だった。

気温は4度で雨。気持ちも沈んでくる感じだった。

(5月11日―12日)
(続く…)
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by itsumohappy | 2007-06-01 00:30 | 歴史・領土問題 | Trackback | Comments(2)
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Commented by おロシア人 at 2007-06-01 20:25 x
当たり前だけど、船の旅は危険が伴う、、、のですが、なかなか厳しいですね。高齢の方もいたというし。(もっとも、高齢のかたのほうがピンシャンしてたりして。)
滑走路がすごいです。野良牛。。。
Commented by itsumohappy at 2007-06-02 23:36
おロシア人さま 海があまりに荒れると訪問を中止することもあるそうです。実際、高齢の方は強かったですね。さすがです。
牛は、街なかで放し飼いなのですね。メスはお腹が張ってくると家に帰ってくるそうです。オスはどこかに行ってしまっても不明になることはない・・・という話です。牧歌的です。 


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