A・ソクーロフ監督の新作ドキュメンタリー映画(2006年)で、先だって亡くなったロストロポーヴィチ氏とボリショイのオペラ歌手だったヴィシネフスカヤ夫人の物語。2人の超豪華な金婚式の模様から始まる。デジタル撮影の画面が鮮やかで、はじめTVを大画面で観ているような錯覚がした。
映画は2部構成。夫妻の生い立ちと出会い、芸術家として大成するまでの歩み、16年間の亡命生活と故国への帰還を淡々と紹介し、次に、ポーランドの作曲家が献呈したチェロ協奏曲をウィーン・フィルと初演する巨匠と、後進の指導に情熱を注ぐ夫人の様子を描く。 ペテルブルクにある美術品に囲まれた邸宅で、ソクーロフ監督のインタビューに答える2人の話は興味深い。監督の語り口は静かだが、カメラは2人の表情をがっちり捉えて離さない。ロストロポーヴィチ氏のユーモア溢れるお茶目さは、故米原万里氏の著作などで紹介されていたとおり。ヴィシネフスカヤ夫人の表情はやや険があり、幼時からの苦労がしのばれるようだ。 夫妻が作家ソルジェニーツィン氏をダーチャに匿い擁護した(地下出版の手助けなどをした)ことは、当然映画で説明されているが、観に来ていた10代・20代位の人たちはソルジェニーツィン氏を知らないだろうなぁ。 ロシアのオペラ(私はよくわからない)や音楽がお好きな方は、より楽しめると映画だと思う。東京・渋谷のイメージフォーラムで公開中。少なくとも5月25日までは上映するとのこと。地下の映画館は、椅子はふかふかですが、スクリーンの位置が高いのであまり前に座らないよう注意!です。 なお、ヴィシネフスカヤ夫人はソクーロフ監督のチェチェン問題に関する次作に出演。現地グローズヌイでのロケもこなされたそうです。
by itsumohappy
| 2007-05-03 18:15
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