人気ブログランキング | 話題のタグを見る

北方領土海域での安全操業

先月21日に、羅臼漁協所属のすけとうだら刺し網漁船「第38瑞祥丸」が、北方領土の国後島沖でロシア国境警備艇にだ捕された事件から1ヶ月が過ぎた。船長を除く5人の乗組員は、2月3日に解放されたが、船長は、2月26日現在、日本の人道支援で国後島に建設されたプレハブ「日本人とロシア人の友好の家」に依然拘束中である。
(この「友好の家」、いわゆる「ムネオハウス」は、昨夏、日本人1名がロシア側の銃撃で亡くなった「第31吉進丸」だ捕事件の際も同船長他2名が滞在した所だが、本来、北方領土訪問事業で島を訪れる日本人の宿泊所などに使われる日ロ交流のための施設。)

北方領土海域での安全操業_d0007923_22312912.jpg北方領土海域での安全操業_d0007923_22315738.jpg




すけとうだらと刺し網漁法
(網目に引っかかった魚をからめ取る)


瑞祥丸船長は、日ロ間の取り決めである「北方四島周辺水域における日本漁船の操業枠組み協定」で許可されていない国後島沖3海里以内で操業し、だ捕された。報道によれば、船長は区域外操業を認めており、2月19日、密漁の罪で起訴された。3月5日予定の初公判で罰金刑が言い渡される見通しとのことである。

北方領土は日本の領土と言っても、それを実効支配しているロシア側から見れば、この安全操業枠組み協定に基づかない同海域での操業は取り締まりの対象となる。
同協定は、日本漁船が、北方四島(歯舞、色丹、国後、択捉)周辺12海里内での操業を銃撃・だ捕されることなく行うためのもので、98年に発効した。

北方領土海域での安全操業_d0007923_2251527.jpg

この協定では、海域の管轄権は規定されず、北方領土問題解決までの暫定的な措置とされている。毎年10月頃、モスクワで日ロ政府が、協定の効力の1年間の継続を確認し、その後北海道水産会がロシア側の漁業当局と具体的な条件交渉を行う。2007年の操業条件は、昨年と同じで以下のとおり。操業の許可証が到着してから出漁する。

●漁獲量
 すけとうだら    955トン
 ほっけ       777トン
 たこ         216トン
 まだら等混獲分  232トン
 
●漁期
 すけとうだら刺し網漁業  1/1~3/15 
 ほっけ刺し網漁業      9/16~12/31
 たこ空釣り漁業       1/1~1/31、10/16~12/31
 
●隻数    48隻

●協力金等
 資源保護協力金 2,130万円 
 ロシア水産研究機関への機材供与相当分 2,110万円 


このように、「我が国の領海」内でも好きなように魚をとれないし、決まった魚をとるにもお金が要る。「協力金」の85%は「海外漁業協力財団」が補助し、残り15%を出漁漁船が負担する。たこ漁漁船の場合だと1隻あたり約43万円となる。協力金の負担が苦しい漁業者が廃業すると、さらに各船の負担金が重くなるという問題がある。

根室海峡でのすけとうだら漁獲量は、ピーク時の11.1万トン(1989年度)から、現在はその約1割以下に落ち込んでいるそうだ。水産資源枯渇の一因として、ロシアのトロール船による乱獲が指摘されている。
水揚げ高が落ちている中で、目の前の海で自由に操業できない漁業者はわりきれない思いをしていることだろう。「安全操業」は、領土問題を棚上げしており、信頼関係に基づいて行われる性格のものであるから、越境操業などルール違反が及ぼす影響は大きい。

一方、ロシアでは、98年の安全操業協定の発効後の同年に定められた新法により、国境地域の外国船操業に関する国際合意に議会の批准が義務づけられたため、同国内では、北方四島海域での安全操業協定は見直しが必要とする意見があるそうだ。

領土問題の解決に展望が見えない中、根室をはじめとする地元の経済は疲弊する一方らしい。
(2006年10月25日、28日北海道新聞、2007年2月20日北海道新聞、水産庁HPより)
参考記事 
************
【すけとうだら】
北海道周辺と三陸沿岸が主な漁場。北海道沿岸の盛期は1月~2月。産卵のために沿岸にやってくる。夏から秋は、餌をとるため分散している。冷凍すり身に加工され、かまぼこ、ちくわの原料となる。卵巣がたらこ、めんたいこ。白子を練ったものがたちかま。鍋に入れるとおいしい。フィレオフィッシュの魚もすけとうだら。
by itsumohappy | 2007-02-26 23:50 | 歴史・領土問題
<< 最近の話題から プリセツカヤ 『闘う白鳥 マイ... >>