ロシアが気になる

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2006年 10月 05日

ドストエフスキー『白痴』

d0007923_23564018.jpg白痴。なんかすごいタイトルである。英語(IDIOT)と同じで、ロシア語でも“ИДИОТ”。ロシア語では「白痴」の意味のほか「ばか」「まぬけ」程度の軽い意味もあるらしい。周囲から白痴と称されている、ムイシュキン公爵が主人公。ドストエフスキーが究極の理想とする、完全無垢な心の美しい人間として描かれている。

長編小説は、前半ぐいぐい引き込まれた後、途中、本来のストーリーに必要なのかよくわからない描写が続く中だるみがあり、その足踏み状態をクリアすると、急展開して終了。というパターンが多いが『白痴』もそれにあてはまるかも。

前半、ムイシュキン公爵の憧れの君、ナスターシャ・フィリポヴナが強烈な印象を残す。暖炉のシーンが前半部分の山だろう。ナスターシャの登場シーンがもっとあるとよいのだが。アグラーヤよりナスターシャがいい。

公爵は周囲を癒すキリスト的な存在のようでややリアリティーがないが、その他の人物はそれぞれに人間くさく複雑かつ現実的。リザヴェータ夫人が一見わけのわからないおばさんのようで、実は一番の慧眼の持ち主かもしれないと思った。登場人物は、ロシアの長編小説の例外に違わず大勢出てくる上に名前がややこしくて(父称がついているとき混乱しがち)頭に入らず、何度も本の扉裏にある人物表を参照してしまう。

俗世の中で心の美しさは壊されてしまう。世の中、きれいごとじゃ生きていけない。そうわかっていても善良に生きたい人間は日々どうあるべきなのだろう。「結局、我々はみな幻影に過ぎない」というリザヴェータ夫人のせりふがドストさんの答えなのだろうか。

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黒澤監督が『白痴』の翻案を映画化している。(1951年公開) 舞台は北海道。出演:森雅之、三船敏郎、原節子、久我美子。ああ、あの役とすぐわかるキャスティングである。
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by itsumohappy | 2006-10-05 00:01 | 文学・本 | Trackback | Comments(0)
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