ロシアが気になる

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2006年 09月 19日

ドストエフスキー『死の家の記録』

ドストエフスキー。中高時代の課題読書に必ずといっていいほどある「罪と罰」「カラマーゾフの兄弟」は読んだことは読んだが、今よりもさらに理解力の足りない昔のことで、内容はほとんど忘れてしまった。長くて大変だったことは覚えている。世の人が絶賛する文豪の有名作品でも、傑作だ!感動した!という感想が持てないと、やっぱり自分にはこんな高尚な文学は難しいから今後はやめとこ。。と思う。私にとって、そんな作品の代表がドストさん文学。

d0007923_0303239.jpgしかしドストさん文学はやはり読まなければならないもののような気がするので、今後少しずつ読もうかなと思う。長編だと挫折しそうなので、まずは文庫1冊からということで『死の家の記録』(1860年発表)。ぺトラシェフスキー事件で検挙され、死刑の寸前に恩赦によりシベリア流刑となったドストさんの実体験に基づく小説である。というか実体験そのものと読める。


結論から言えば、読みやすくて助かった。リアリティに富んでいてまさに「記録」。監獄の人間模様と生活が活写されていて、映像が目に浮かぶよう。(実際ソ連では映画化されたようだ)
入浴の場面(足枷をしながらどうやってズボンを脱ぐかというところが面白い)、たまの娯楽で許される演劇の場面(『俘虜記』(大岡昇平)を思い出した)、労役の描写などなど。作業の合間に犬や山羊をかわいがったりする場面もなんだかユーモラス。ドストさんにしては意外な面白さがある。

一番印象に残るのは、人間観察の妙。監獄社会でも普通の社会と同様さまざまな類型の人間がいて、生まれながらにして人としての性の良さを持つものもいればその反対もいる。現在、私の周りにもいるようなタイプが本に出てきて、昔も今もロシアでも日本でも変わらない、人間そのものの姿を感じた。

訳者工藤精一郎氏(新潮文庫)の解説によると、この本に出てくる登場人物の造形が、後のドストエフスキーの大作に反映されているとのこと。例えば、監獄仲間で、チェチェンあたりの山賊兄弟の弟のアレイという、言ってみればうい奴が出てくるのだが、それがアリョーシャ(「カラマーゾフの兄弟」)やムイシュキン公爵(「白痴」)という形になるというように。

ロシアの伝統(と私が勝手に思っているのだが)、収容所文学の初期の傑作だと思う。それにしても昔からロシア人は体制に痛めつけられている民族だなぁ。
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by itsumohappy | 2006-09-19 00:39 | 文学・本 | Trackback | Comments(0)
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