戦争の残酷さを描いた2作品について。
●アンドレイ・タルコフスキー「僕の村は戦場だった」(1962年、ソ連) なんとなく苦手なタルコフスキー監督だが、この映画はわかりやすい。冷徹なまでにリアルなドラマで、観ていてつらい。独ソ戦で村が戦場となり、家族を失った少年のひきつった顔ばかりが印象に残っている。芸術的という形容は戦争映画にはふさわしくないが、白黒の精緻なコントラストの画面に、怒りと悲しみが静かに広がる。自ら志願して対独パルチザンに協力し、戦地を駆け回って斥候活動をするこの少年は12歳の設定。独ソ戦の開始は1941年なので、少年は1930年前後の生まれである。つまりタルコフスキー(1932年生まれ)自身の少年時代にあたる。同世代にはゴルバチョフ、エリツィン両元大統領(1931年生まれ)がいる。 観るべき映画のひとつであると思うが、救われない、いたたまれない気分になる作品である。制作された1962年はキューバ危機が起きた年。冷戦の時代、この映画はあまり当局に受けなかったかもしれない。タルコフスキーは、表現の自由を求めて亡命したが、その後ほどなくして1986年、病没した。 ●ヴィットリオ・デ・シーカ「ひまわり」(1970年、イタリア) どこまでもどこまでも続く画面いっぱいのひまわり畑が心に残る。私の、ウクライナのイメージが決定づけられた映画。イタリア映画らしく情感、哀感たっぷりで、有名なテーマ音楽も印象的。私が観たのは再上映時だが、ソ連は「悪の帝国」などと呼ばれている時代で、まだまだ謎の国だった。西側初のソ連ロケが行われた記念すべき作品で、映画を観ながら、これがモスクワの地下鉄、赤の広場・・・と感嘆した覚えがある。 スターリンが死んだことだしと言って、出征したまま帰らない夫を単身捜しに行くソフィア・ローレンの、存在感のある演技はすばらしい。スターリンの死は1953年、戦争が終わってしばらく経ってもさまざまな事情でソ連から帰還できない人々がいたのは日本人の場合と同じ。共演のソ連女優、リュドミラ・サベリーエワの、ローレンとは対照的な清楚な美しさも心に残る。
by itsumohappy
| 2006-08-12 12:58
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