ロシアが気になる

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2006年 06月 26日

ナボコフ 『ロリータ』

d0007923_0122061.jpg『ロリータ』は、亡命ロシア人作家ナボコフが1955年に英語で発表した小説。日本では59年に出版された。05年出版の新訳(新潮社)を読んだ。
「ロリータ」という言葉に対するイメージは人それぞれだろうが、本家本元のこの小説に登場するロリータは、“ニンフェット”として主人公ハンバート・ハンバートに崇められて?はいても現実にはすれっからしで頭からっぽの女の子として描かれている。ハンバートはこのニンフェットの虜となるが、土壇場に来てその永遠なる所有が果たせず、自滅の道をたどる。

今読んでもそれなりにインパクトがあるこの小説、半世紀前はさぞかしセンセーショナルだったろう。ハンバートの妄想など心理状態が読みどころだろうか。ただ主人公に感情移入ができないので、小説の世界に入っていけず、共感できない(従って感動できない)のが難である。あくまで私の場合だが。しかし、この小説が、単なる「少女を愛する変態中年男の話」であれば50年も生き残れない。
ハンバートとロリータは即ちヨーロッパの伝統文化とアメリカの低俗社会とも読めるのだが、そのヨーロッパの教養はペダンチックに走りすぎて喜劇がかっており、蠱惑的な少女に振り回されるハンバートは滑稽で哀しいキャラクターだ。物語の展開はあっさりしているようでいながら実は計算されている。実際は悲劇かもしれない。ナボコフの深い教養も垣間見えるユニークな小説。万人にお勧めするものではないが、一読の価値はあると思う。

「あとがき」に小説の日付のある食い違いが、ナボコフが巧みに意図したものか単なるミスかで小説ががらっと変わる、と説明がある。もちろん、ナボコフの仕掛けだと思った方が面白いのだが・・・。(詳しくは読後にご参照下さい。)

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ナボコフが18年間住んだペテルブルクの家。現在ナボコフ博物館となっている。

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d0007923_0154214.jpgウラジミール・ナボコフ(1899-1977)
ペテルブルクの富裕な貴族の家に生まれる。父親は政治家で弁護士だった。ロシア革命後亡命し、ベルリンやパリで暮らした。ケンブリッジ大学を卒業。40年に渡米、コーネル大学でロシア文学を講義。『ロリータ』出版後は文筆活動と趣味の蝶の採集に専念。スイスで死去。
『ロリータ』は2度映画化されている。
  キューブリック版「ロリータ」(右)d0007923_0175287.jpg

 
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by itsumohappy | 2006-06-26 00:11 | 文学・本 | Trackback | Comments(11)
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Commented by mountain-deer at 2006-07-01 00:55
はじめまして、ロシア好きのヤマ☆ネコと申します。
ロシアの音楽、映画、ヨーロッパとアジアが混在してるかのような風情、たまりません♪
ロシアにも行かれたんですね!うらやましいです!
ヤマ☆ネコはまだロシアの上辺しか知りませんので、
とても勉強になります。
またお邪魔させてください!
Commented by itsumohappy at 2006-07-01 02:08
ロシア好き仲間は周りにいないので、うれしいです!ロシア音楽の切なさ(私は民謡しか知りませんが)はぐっと胸に来ますね。映画といえばフィルムセンターで国交50周年記念?ロシア映画特集やるみたいです。ここは記事があまりないブログですけど、またお越しくださいね(^^)
Commented at 2006-07-04 23:22 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2006-07-05 01:48
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by mountain-deer at 2006-07-11 02:59
素敵な情報、ありがとうございます!!
すっかり観過ごしてしまうとこでした…
ホント、感謝しますー☆!
Commented by みずすまし at 2008-07-11 14:48 x
ドストエスキー罪と罰は強烈な印象があります、西洋の英雄主義に憧れ理不尽な勝手な理屈をつけて金貸し老婆を殺す、人殺しの重圧に次第に精神を蝕まれて行きます。、あの時と同じ、真ん丸い月の灯りが窓にさしている、老婆が片隅に座っているラスコールニコルは老婆の頭に幾度も斧を振り下ろす、ラスコールニコルは何時も聖書を読んでいたソーニャに人殺しを告白します。 ソーニャはロシヤの母なる大地の申し子救世主ですから、青年に罪の懺悔を命令する。あなたは広場に行っペテルプルクの大地に接吻して四方にお辞儀をしてから私が殺しましたと大きな声で言いなさい!
ラスコールニコルはソーニャの命令を実行します。
西洋の英雄思想ことにナポレオンに憧れてペテルブルクの大地から離れてしまった哀れな孤児ラスコールニコルでありました。
 スペードの女王の伯爵夫人殺しは再生の機会を与えられなかった。
30年後にドスエスキーは罪と罰にこの小説を滑り込ませたようです。
この頃ドスエスキーの白雉が人気だとか言われていますが私も読んで見たいと考えています 
ドストエスキーの小説のテーマは「愛と神」であると言われていますが
人間の原点かと思います

Commented by みずすまし at 2008-07-11 17:04 x
ドストエスキーの小説のテーマは愛と神だと思いますが彼は結核の妻を見捨てて愛人とヨーッパに旅行に行っています。ルーレツト賭博の癖があった、不倫帰国後に間もなく妻が亡くなります。1864年頃妻マリヤの死後に己の罪を詫びています。ヤファウエ.キリストを最高に愛したが教会には行かず牧師を愛していなかった。神と愛を追求したドストエスキーも倫理を踏み外した一人のペテルブルクの小説家であったのでしょうか
Commented by みずすまし at 2008-07-12 12:59 x
ドストエスキーの白雉に登場する4人の人物は凄まじい変形した人格の葛藤でした。うつくしいナスターシャ世界の何者をも尊敬していない何時も自分を滅ぼそうと惨い自虐行為をする。キリスト心を持つムイシキン
悪魔心のロゴージン、世の為人のための心を持つ温かい人格のアグラーヤ しかし4人とも兄弟の様な性格があって互いに補完しあった奇妙な展開でした
ドスエスキーの小説は深い小説と言われていますが難解です
Commented by みずすまし at 2008-07-12 14:45 x
ガーリー美少女の糸に手繰り寄せられて出口の無い迷路にのめり込んだハンバード教授はある意味で人間ぽいと思います。
少女もまた人間味のある人と思います。問題提起だし今は当たり前の現象だと思います 
Commented by みずすまし at 2008-07-12 14:57 x
ウラジミールナボコフ ロリータ発表当時としてはセンセーショナルであったかも知れないが現在は現象も氾濫しています。ハンバードきょうじゅが美しいロリータに骨抜きになり聖職に泥を塗ってラブリーに走ったことは
何か理解できる気がします。びしょうじょに直面したら誰だって迷う事でしょう 小説も映画も面白く感じました
Commented by itsumohappy at 2008-07-12 17:31
みずすましさん
ドストエフスキーは難解だと思います。読みごたえあるのですが、
すがすがしい気分にはなりません。たまに読みますが、立て続け
にはきついかなぁと。

ロリータは、思ったほど衝撃的ではなかったです。当時は違った
のでしょうが。


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