2006年 02月 14日

ブルガーコフ 『巨匠とマルガリータ』

2005年末、小説『巨匠とマルガリータ』がロシアで初めてTVドラマ化され、初回視聴率がロシア全土で約50%の新記録達成というニュースがあった。(2006年1月5日東京新聞ほか) 文学好きの国民性を反映しているというのだが、それにしても全10回のシリーズでロシア人の約3分の1が見たというからすごい。興味をひかれたので、原作を借りてきて読んでみた。
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      ロシア国営TV 「巨匠とマルガリータ」 (巨匠:アレクサンドル・ガリビン、
      マルガリータ:アンナ・コヴァルチュク  巨匠はちょっとおやじすぎるような・・。)

なんというか、今までこんな小説は読んだことがない。「感動」などという言葉では軽すぎる。読んでいて、ああ、終わらないでほしいと思う本が他にどれだけあっただろう。
正直、はじめ本のボリュームを見て、ドストエフスキー式の長大で小難しい話だったらとても最後まで読みきれないな、と思った。(杞憂だったが)
首の切断。悪魔一味の黒魔術ショー。人々の失踪。亡者の舞踏会。平行して2000年の時を飛んで描かれるポンテオ・ピラトの苦悩。いろんな話が交錯し、かなり読み進んでも巨匠もマルガリータもなかなか登場しないし、ロシア人の名前はややこしいしで、一体この小説はどうなっていくのだろう?と不安に思いつつも話の面白さに引き込まれていく感じだった。

この本はSFファンタジー&ラブロマンス&喜劇&悲劇の形をとった体制批判と読むべきなのか?ロシア文学の伝統、弱い男と強い女のストーリーでもある。一口では言い表せない。へんてこな登場人物(動物)に笑わせられるが、小説としての面白さの後ろ側にあるものは実に深い。伏線があちこち張られていてさらーっと読んでいると見落としてしまう。(何度も前のページに戻りつつ読んだ) 1回読んだ位では読みきれていない。
悪魔のせりふ「原稿は燃えないものです」や巨匠のせりふ「お前は自由だ!」に込められた作者の思い。それは、精神の自由は永遠、ということなのであろう。

d0007923_040419.jpg作者ミハイル・ブルガーコフ(1891-1940)は、『白衛軍』(1925)という小説で作家の地位を確立したそうだが、その後小説や戯曲の中での体制批判のため当局から圧殺され、作品発表の機会を奪われた。粛清されなかったのは、スターリンが『白衛軍』の舞台版のファンだったからという説がある。亡命も許されず、孤独に死んだ。
『巨匠とマルガリータ』は29年から死去直前まで書かれ、原稿は夫人によって保管されていた。不完全ながらもソ連国内で出版されたのは66年、完全版の出版は73年とのこと。やはりロシア人にとってこの小説は特別なものであるのはわかるような気がする。

私が読んだのは集英社版だが、群像社版(悪魔の逃走地図付きらしい)も見ようと思ってかなり大きな書店を何軒かまわったが双方の版ともどこにもない。残念なことだ。


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ストーンズのアルバム「ベガーズ・バンケット」(1968年)にある「悪魔を憐れむ歌」は、『巨匠とマルガリータ』をヒントに作られたもの。
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by itsumohappy | 2006-02-14 00:52 | 文学・本 | Trackback(1) | Comments(4)
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Tracked from ブローグニック at 2006-03-26 22:36
タイトル : 巨匠とマルガリータ
 お客  お話を考えてごらん ネズミが僕に お茶でもいかがって 新しいおうちに さそってくれた。 なかなか おうちに はいれなくって、 やっとのことで はいこんだのさ。 ... more
Commented at 2006-02-14 12:44 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by itsumohappy at 2006-02-15 01:21
群像社、ロシア文学いろいろ出しているのに残念ですー 流通しなければ読まれないですよねぇ あまり訳文が違っていると印象が変わってしまうのでできれば見てから買いたいとこではあります。。
Commented by まいじょ at 2008-06-15 22:19 x
へぇ~。ロシアではTVドラマされていたのですね。この本を読みながら、ファンタジー映画風にSFXを駆使して映画化すれば面白そうだなと考えていました。

水野忠夫の旧訳で読みましたが、今度は改訳で読んでみようと思います。
Commented by itsumohappy at 2008-06-16 21:59
まいじょさま 
こんばんは!DVDを入手し、観てみましたが、んー長い!です。
ロシア語わからないので、画像みているだけですが、けっこう忠実
に映像化しているようです。ただ、SFXがハリウッドもののようには
いかなくて、もう少しがんばりましょう・・って感じかなぁ。
あまりにファンタジックな部分だと、映像より想像で楽しむほうが
いいような気もちょっとしました。


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