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太平洋パイプラインプロジェクト

2005年11月、プーチン大統領の来日の際行われた日露首脳会談では、肝心の北方領土に関する政治文書は作成されなかったが、経済・貿易面ではエネルギー分野での長期協力と称して太平洋パイプラインプロジェクトの早期実現が文書で合意された。設置は第1段階(東シベリアの油田地帯近くのタイシェト~スコヴォロディノ)と第2段階(スコヴォロディノ~ペレヴォズナヤ)に分けて工事する。とは言え、着工時期は決まっていない。そもそも油田もこれから開発するのであるから実際の産出量も明確ではない。
ロシアとの石油・天然ガス開発は既に1970年代よりサハリンで進められ、サハリン1、サハリン2プロジェクトなどに伊藤忠や三菱商事が参加している。

★サハリンプロジェクトと太平洋パイプラインプロジェクト
 (ジェトロセンサー2004.7より作成)
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世界最大級の石油、天然ガス産出国ロシアは、欧州のみならず中国、日本など極東市場への進出を図っている。中国向けに大慶までのパイプラインも建設予定であり、中国とのエネルギー争奪戦となる。

日本は、原油の約9割を中東に依存していることから政府は、エネルギーの安定供給のためには輸入先の分散が望ましいとしている。プーチン大統領曰く東シベリアから日本へ移送されるのは石油のみならず、天然ガスも視野に入っているとのこと。

なんにしても壮大な計画であるが、150億~180億ドルと言われる建設資金の調達・負担や凍土の工事に見合う採算性などの問題は未知数だ。また、安定供給に関してもガス価格をめぐるウクライナとのいざこざで正月早々ロシアが欧州向けガスの供給をストップした事件などをみるとなんだか不安なものがある。

建設に伴う環境問題もある。バイカル湖付近からシベリアの大地をパイプラインが約4,200キロにわたって突っ切るわけだが、周辺地域の森林、動物など生態系への影響が懸念されている。太平洋への出口に至るまでの敷設予定地、極東ロシア沿海州の海洋自然保護区には、野生で30数頭という絶滅寸前のアムールヒョウが生息している。ターミナル予定地のペレヴォズナヤの浅い湾ではタンカー事故による油流出の危険も高いという。そのため、環境保護NGOやアメリカの動物園団体が小泉・プーチン両日露首脳にパイプラインのルート変更を訴えている。

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by itsumohappy | 2006-01-25 00:14 | ロシア
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