『ペテルブルグ物語』は、(群像社、2004年)ゴーゴリの3作品『ネフスキー大通り』『鼻』『外套』をロシアの文芸学者エイヘンバウムがまとめたもので、この本は新訳である。ロシアでの出版当時の不思議な感じの挿絵が入っていて、訳も自然でとっつきやすい。ゴーゴリは、日本で言えば幕末の頃の人である。私は他には『検察官』位しか読んだことがないが、思っていたよりずっと読みやすい。
『ネフスキー大通り』『鼻』は幻覚的というのか簡単に言えば訳わからない話である。『ネフスキー』は、幻想と妄想が交錯したストーリー、『鼻』は、奇想天外、へたするとナンセンス噺で重厚長大なロシア文学のイメージが崩れる。
今のネフスキー大通り 昔は馬車が行き交っていた
誰が読んでも面白いのが『外套』だと思う。当時の、階層社会、官僚社会に生きる人々の生態が生き生きと描かれている。(ゴーゴリは下っ端役人の経験があるそう) 主人公の惨めさ、情けなさが真に迫っているが、それだけでは貧困物語になってしまうところオチがあって楽しませてくれる。
次は『死せる魂』を読んでみようかな。