2005年 10月 12日

プーシキン 『青銅の騎士』

9月にサンクトペテルブルグを初めて訪れた。ホテルが中心部から遠かったこともあって短い滞在で観光できたのはごく一部分だ。しかしながら強い印象を受けた。運河のせいか華麗な冬宮のせいかよくわからないのだが、忘れがたい街だ。
沼地のようなところに何万人も徴用してむりやり?街を作りあげたのはピョートル大帝。厳しい労働で街の誕生までに10万とも20万とも言われる多くの人が犠牲になったらしい。建都後も何度か大規模な洪水に見舞われた歴史がある。

デカブリスト広場(元老院広場)の端に、ネバ川に向かってピョートル大帝の像が建っている。エカテリーナ2世が大帝を称えて作らせたものだ。
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その昔ペテルゴフ(ペテルブルグ郊外)で悪さをしていた大蛇を大帝が懲らしめたという伝説があるそうだが、この大帝の像に踏みつけにされている蛇は北方戦争の敵方スウェーデンの寓意らしい。ロシアの大詩人プーシキンの作品にちなみ「青銅の騎士」像という。で、帰国後さっそく『青銅の騎士―ペテルブルグの物語』を読んでみた。解説を見るとペテルブルグのイメージを後世決定づけたと言われる小説(というか詩)だそうだ。

洪水によって人生の夢と希望を打ち砕かれ狂気となった男が、街の破滅をものともせず、悠然と高みにそびえる青銅の騎士に挑む。
物語詩というのか、「オデュッセイア」みたいに詩形式にストーリーが流れる。私にはあまり読みつけないジャンルである。叙情的という言葉はわかりにくい表現だが、こういう作品のことを言うのだろう。原文でなければ韻などを鑑賞することは不可能であるが、日本語訳からでも喜怒哀楽の感情のうねりが行間に窺える。デカブリストの乱を暗示させる部分は、皇帝ニコライ1世の検閲で当時削除された。
物語は短く、簡潔であるが、デカブリストのシンパであったプーシキンが熱い魂の持ち主であったことが感じられる。この時代、この街、そしてプーシキンでなければ成り立たない。そんな作品だと思う。いつの日かロシア語で読んでみたい。
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by itsumohappy | 2005-10-12 00:00 | 文学・本 | Trackback | Comments(0)
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